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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
89
:
菅 公隆「サNp3_S
:2020/02/08(土) 06:35:10
柏木が仰向けに倒れている。
丁度そこは広間中央のモザイクタイル――数種の大理石を組み描いた花紋様の中心だ。
傷口から湧き出る血が、じんわりと……色とりどりの美しい石のタイルを黒く染めていく。
その様は、わたしの眼にはひどく宗教的な絵に映った。
円形に広がる魔法陣にも似た幾何学模様、その上をすべるように広がる血は柏木の――聖職者の血。
あとどれくらいだろう?
急所を撃ち抜かれたヴァンパイアの身体が消えてなくなるまで……5分から10分。
彼にはまだ意識がある。「送る」時間はまだ残されている。
「局長!」「司令!」
バシャリと音を立て、神聖なる血溜りを踏み荒らしたのは如月達だ。
膝をついてしゃがみ込み、、血溜まりに横たわる柏木の手を拾い上げ、強く握りしめる。
柏木は柏木で、柔らかな眼差しを彼等に向けている。
さらに足を踏み出す。
一歩、また一歩。
チャリ、と足先に触れたロザリオは、十字架のメダイが半分に欠けている。
柏木の唇が、何事か呟いている。
何を話しているのか、この耳には入ってこない。
頷く2人が涙ぐんでいる。
次第に褪せていく眼の光。
時間をかけ、いくつかの言葉を紡ぎ……
そっと閉じられた瞼。
……まだ早いよ柏木。
わたしはまだ言ってない。あの時の礼も、感謝の言葉も。
必ずと約束した、「あれ」もまだ返してない。
もっと時間があれば……しょうもない恨み言だって言いたいんだ。
如月達の手から滑り落ちた手。
穏やかな、とてもヴァンパイアと思えない死に顔。
口元には聖者の微笑みすら湛えている。
「何故だ柏木。……もっと早く――そうと言ってくれたら――」
どことなく呟いたわたしの言葉に、ぎょっとした顔を向けたハンター2名。
「てめぇ……!?」
如月がバッタのように、二歩、三歩と飛び退いた。
咄嗟に銃を向ける麻生。
……気づくのが遅いよ。
わたしはさっきから、如月のすぐ横に膝をついて座ってたんだよ?
特に麻生。
君は柏木を挟んで対面に居たんだ。
仮にまったく音も立てずに忍び寄ったのだとしても、わたしの姿を正面から捕えられない筈がない。
それでも免状持ちのハンターかい?
それとも……柏木の事で頭が一杯だった?
それにしたって……いや……もしかして……
「その眼、見えてない?」
麻生の頬が引き攣る。その眼は心なしか焦点が合っていない。
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