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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

88菅 公隆 ◆GM.MgBPyvE:2020/01/26(日) 12:08:46

ぼんやり眺めていた。
思い出されたさっきの記憶が鮮明過ぎて、現実感がまるで無かった。

音のしない。
色のない。
躍動も緊迫もない。
まるで夢だ。
眼を向ける被写体だけが鮮明な夢。
すべてがスローモーションの映像だ。
互いの背を預け、銃を構える如月達も。
銃口から、またはシリンダーからゆっくりと吹き出し、宙へと拡散する硝煙も。

撃つ。
返す。
撃つ。
また返す。

くりかえす一連の動作。
苦戦する2人に対し、ほとんど体勢を変えない柏木。
すらりとした長身に、広い肩幅。
記憶の彼もそんなだった。
扉から姿を見せた黒い司祭服。
思い返せば返すほど、重なる。柏木とあの神父の姿形が……ピタリと。

その眼が不意に血色に染まる。
見れば、ゆっくりとこちらに向かう銀の弾丸。
……小賢しい。
軌道を予測、それを目掛け、右手を振り上げる。
それを一心に見つめる視線の主は……柏木?
駄目だよ。
見えてるだろ? そっちにも向かってるって。
3つだ。
さっきより1つ多い、3つの弾丸。その配置はさっきとは違――

振り下ろした右手に柔らかな金属の感触。
問題は柏木だ。あのタイミングは良く見積もってギリギリ。
しかしわたしは見てしまったんだ。彼の背が血の飛沫をあげる所を。

「柏木!!」

血しぶきと後方へと飛び出した弾丸が二つ。
当の本人はまだ気づいて居ない。
一つ目の弾丸を掴み取ったその手を泳がせ、眼には当惑の色を浮かばせ、しかしすぐに壁にぶつかった弾の存在に気付いた。

嘘だろ?
君ともあろう者が……あんな簡単に牽制に――

紅い瞳が色を無くし、逞しくしなやかな長身が、まるで意思を無くした人形のようにゆらりと傾いて倒れる。
纏う黒衣。
胸のロザリオ。
吹き抜ける風。
降りかかる雪。
チェーンが切れたのか、ロザリオが宙を舞う。
渇いた音を立て、緋の絨毯に横たわる銀の十字架。

「柏木……?」

わたしは一歩、踏み出していた。


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