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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
86
:
菅 公隆
◆GM.MgBPyvE
:2020/01/25(土) 18:23:38
ガチリとスライドを操作する音。
色濃く漂うオイルの――よく機械に差す、あのツンとした油の匂いがした。思えば昔からこの匂いが苦手だった。
「心の支度はいいですか? 言い残す事があれば、訊きましょう」
「……残す言葉などありません。ですが納得のいかない事がひとつだけ」
「未練を残してはいけない、それは何でしょう」
「父が何故あんな事をしたのか……その理由が知りたい」
「もちろん、怒りの矛先を彼等に向けるためです。あの年に集めた寄付金は10億を超えた」
「しかしあれほどの犠牲が必要とは思えない。絶えず犠牲者も出ているじゃありませんか」
「いいえ、『必要』だったのです。かの司祭は当時、『ヴァンパイアと人との共存』を謳っていたのですから」
「……共……存……!?」
思わぬ単語に絶句したさ!
人とヴァンパイアが仲良くする選択なんて、考えつきもしなかったからね!
「おや……知りませんでしたか? 彼は熱心に説いていたのですよ、彼等も同じ神の子、故に共に歩むべしと。
バチカンではそれを重く捉え、近く呼びつける気でいたようです。あの事件は彼等からすれば……体のいい厄介払いでした」
「まさか……共存など……可能でしょうか?」
「妙な考えを起こしてはいけない。夢物語ですよ、滅び』以外の選択肢などない」
「神の子……同じ……」
「え……?」
呟いたわたしに、神父が怪訝な声を返した。
「そうです! 彼はヴァンパイアも『人の心』を持つ事を知っていた。だからこそ、そう訴えたのではありませんか?」
「……人の……心ですって!?」
「彼の元にも、わたしと似た悩みを持つ者が告解に訪れたのかも知れません。だから――」
「まさか……! そんな事をいちいち気に病んでいたら、司祭の仕事は務まりません」
「人間だって豚や牛を食べる。いちいちそれを気に病んでなと居られない、とでも仰いますか?」
「……」
「教えてください。同じ心を持つとしても……心の救済は得られないのでしょうか?」
神父の動揺が見なくても伝わってきたよ。
だからどうせなら……いま思ったことを全部口にしてしまおうと思った。
すべてが納得のいく結果になどならない、そんな事は承知している。
心の救済が得られないなら、せめて最期の言葉をこの人に聞いてもらおう。何を遠慮することがあると言うのさ。
「わたしはこの国が嫌いではありません。人も。生真面目で不器用で……でも何の見返りもなく人助けが出来る人達が。
政府に対する批判も多い国ですが、それをこの先変えていきたい、その為にいずれ入閣し、上に立とうと必死に学んできました。
ご存知の通り、血の味は知っています。生きる為に多くの命を奪いました。
人を襲ったことこそありませんが、必ずや避けられない事態も来る、それを恐れ、教会を頼りました。救いの道は無いかと。
ここに来て正解でした。目が覚めたんです。自分の境遇を儚む暇があれば、明るい道を自ら作るべきだと。
平和的な共存、これが可能なら、これほど前向きな選択は無い。支持します。わたし自ら――その社会を実現させて見せます」
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