したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

85菅 公隆 ◆GM.MgBPyvE:2020/01/25(土) 18:14:18

わたしは押し黙るしか無かった。返す言葉が無かった。

「……苦労しましたよ。幸い政府はわたしの存在を知りません。
 子のない老夫婦に引き取られ、別の名と戸籍を手に入れていましたからね。
 目的の為、神学と並行し諜報や格闘技、あらゆる関連分野の技術を身に着けました。
 証拠は掴めず仕舞いでしたが……たった今溜飲が下がりましたよ。彼は――彼に取っての最大の報いを受けたのです」

「その『彼』とは、菅(すが)官房長官のことですね……」
「その通り。菅 隆臣(たかおみ)。貴方の御父上ですよ」


眼の奥で火花が散った。
耳鳴りがしている。
口の中がカラカラに渇いている。

「いつ……わたしがそうと?」
「告白を聞くうちに。人前では決して食事を取らぬ風変りな彼のご子息と、貴方のそれとが一致しました。面差しも良く似ている」

身体の力が抜けたわたしは、再び椅子にペタリと座ってしまった。
信じられなかった。
父が……?
いつも不正に潔癖だったあの父が……何故?
しかし父はこうも言っていた。大人は――特に政治家という生き物は、綺麗ごとばかりでは済まされないと。


「遅くに出来た……待望の後継者がヴァンパイア。しかも生まれついての『真祖』と来れば……これ以上の報いも無いでしょう」
「……報い……なるほど……それで……」

何故自分だけが他と違うのか。
楽し気に食事をする友人を、家族を何度羨んだことか。
露見を恐れるあまり、友人を作らなかった。まして人並みの恋などした事もないと言うのに。
神父の言う事が事実なら――すべてが……あってしかるべき報いというならば――

「殺してください。今すぐ、この場で。わたしなど……この世から消えてしまった方がいい」
「いいでしょう。言われなくとも……そうするつもりでした」
「え?」
「ご存知ですか? 『教会』は天敵である貴方方の駆除を奨励し、各教会に純銀製の弾丸を支給している事を」


僅かな驚きと興味に駆られ、わたしは少しだけ顔を上げた。
神父の黒い姿が暖炉脇に向かい、レコーダーが置かれてあるテーブルの前で止まるのが視界に入る。
ハッとしたよ、彼の手が引き出しから黒い拳銃を取り出すのが見えたのさ。
何事か呟く声がその口から洩れ――くるりと彼が振り向いて、慌てたわたしは椅子から滑って落ちてしまった。
膝の震えが止まらない。
そんなわたしの背後にゆっくりと回り込む神父。

「怖がる事はない。『救済』を求め、来られた方だ。本当はこうなる事を、望んでいたのでしょう?」
「まさか、これが救いですか?」
「勿論です。ヴァンパイアの救いは滅びにある。床に手を付いてください。そう……そのまま。動いてはいけない」
「待ってください、その銃で……わたしを……撃ち殺すのですか?」
「何を今更……と言いたい所ですが、怖気づくのも無理はない。
ご安心なさい。この先永遠に訪れる苦しみを考えれば、一瞬の苦痛など細やかなものです」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板