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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
84
:
菅 公隆
◆GM.MgBPyvE
:2020/01/25(土) 17:44:37
「その時だけは神を呪いました。汝、敵を愛せ!? 家族……島の皆……すべてを奪った悪党を……捜すな、恨むななどと!!」
ダン! っとその拳を壁に叩きつける彼。
弾みで壁の棚に飾られていた聖母のフォトフレームが倒れる。黒い背中がわなわなと震えている。
「許す!? まさか! 許されるものか!! 何の罪もない――敬虔な信者だった彼らを!! それを……!!」
束の間、ピアノの音が鐘の響きとなって鳴り響いた。
彼は深いため息をつき――
ぐっと握りしめた拳をそっと壁から離し、もう片方の手をフレームに伸ばした。
『……お許しください。神の代理であるべきわたくしが……胸の内を吐き出してしまった』
小さな声で呟くのが聴こえた。神父が胸の前で右手を動かす仕草をしている。十字を切ったのだろう。
踵を返したその影が、再びこちらに向かい腰を下ろす。
足を組み、背もたれに寄り掛かる様子が、うっすらと透けて見えている。
「あまり驚かれていませんね。事件の事をご存知でしたか?」
「……えぇ、有名な事件ですし。というか、こう見えて驚いてますよ、確か……救助隊は生存者を見つけられなかったと……」
「そうでしょう。あの直後、わたしは皆の後を追うつもりで崖から身を投じたのですから」
「……え……でも」
「えぇ。死ねませんでした。漁をしていた船に助けらたのです。己の罪深さに慄きました。自殺など神が許さなかったのです」
ギィ……と椅子が鳴った。神父が足を組みなおしたようだ。チャリン……とペンダントが音を立てる。
「ならば、拾った命を……せめて亡くなった皆の為に使おうと思いました。生きて、事の真相を突き止めようと」
「真相? ヴァンパイアの仕業ではないとでも?」
「えぇ。政府がそうと勝手に決めつけたに過ぎません。報道もそれに従っただけだ」
「確か、『住民同士の小競り合い』や、『集団自殺』などと書き立てる記事もあったはずですが」
「……それも全くの見当違いです」
「何故です?」
「キリスト教では争い事を禁じています。まして殺人など最大の禁忌。自ら命を絶つ『自殺』は『殺人』と見なされます」
「ではどこの誰が?」
「解りませんか? フフ……人間、相手があまりに巨大だと逆に見失うものです」
「焦らさずに教えてください。首謀者を突き止めたのですね?」
「えぇ。首謀者は『政府』でした」
「……いま……何と?」
「首謀者はこの国の政府と申し上げました。当時の『内閣』ですよ。指示したのは官房長官。貴方も良く知る人物です」
「そんな筈はありません!!!」
乱暴に椅子を蹴って、立ち上がったわたしにしかし、彼は少しも動じない。
「否定したい気持ちも解りますが、そう考えると納得がいくのです。
ヴァンパイアが遊びで人を殺す事はありません。彼らに取って、吸血とは神聖なる行為のひとつ。
これと定めた獲物は時間をかけ丹念に吟味し、その上で狩る、つまりは相当の美食家。無差別の殺戮などしない。
そして多くが自尊心高く、潔癖症だ。現場を血で汚し、剰(あまつさ)え血溜りなど残す……そんな不始末は絶対に犯さない」
「ですが……!」
「さらに言えば、今際の際の神父様の『捜すな』という言葉。
相手がヴァンパイアだというのなら、わざわざ捜す必要などない。解りきってますからね。
殺戮者は別にいる。現にあの状態は不自然だった。争った形跡も、逃げようとした痕跡もない。
何かを決意したかにも見える……硬く閉じた瞼。これはわたし個人の推測ですが……脅されたのかも知れません。
互いの首を掻き切れと。さもなくばお前たちの大事な――おそらくは神父様を殺す、と言った所でしょうか。
細かな遣り口はともかくとして、遺体の首にわざわざ傷をつけ、罪をなすりつける真似をした」
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