したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

80菅 公隆 ◆GM.MgBPyvE:2020/01/19(日) 21:06:13

風が窓を叩いている。チラチラと白いものが当たっては消えていく。
……雪?
さっきまでは晴れていたのに……それにまだ冬って季節でもないのに……おかしいな。

柏木はと言えば、髪の毛ひとつ乱さず立ったまま。
完璧で隙の無い、自信を湛えた立ち姿は、まるでギリシャの彫刻だ。
ふと……
18年前の「とある男」の姿が重なった。身を包む黒い装束。肩に降りかかる粉雪。
もの悲しい……ピアニスティックな音色。
この曲は――あの時流れていた……シューベルトのピアノソナタ、第13番第2楽章。

……感傷に耽りかけたわたしは頭(かぶり)を振り、流れかけたその曲を追い出した。
どうして今のこの時に、あの彼と柏木が重なったんだろう。彼も彼と同じ……クリスチャンだからか?

……ふん。君と彼を同列に並べるなんて出来ないね。
君は裏切者だ。主と認めた筈のわたしを売った――君風に言えばJudas(ユダ)、とでも?
ま、君が望むのはヴァンパイアの殲滅だって知ってたけどね。
その上で、わたしは君を手足として使って来た。
ほんと、使える部下だったさ。実に優秀だった。
けどそれも終わり。
田中さんの言うとおり、君をいま処刑する。
処刑人はハンター、ヴァンパイアにヴァンパイアは滅ぼせない。
最強の戦士と、最強のハンターがいまここに揃った。
……いいぞ。
最強のカードが潰しあい、ようやく悲願達成への道が開けるんだ。

「眼ぇ覚ませ! あいつが味方のわけがねぇ! 腹ぁ決めてヤルしかねぇ!」

魁人が麻生の肩を揺すぶり、叫ぶ。
それが意味するのは彼らの復活。田中さんの呪縛が解けた証拠。

柏木の眼に新たな光が灯る。最高の獲物を前に悦びに満ちている。
組んでいた腕を静かに降ろす柏木。

「そうか、ようやく支度が……出来たようだね?」

≪――え?≫

冷静に状況を見守る役目に徹していた――いや、徹するべき立場の筈のわたしが――
ドキリとしたんだ。
……この口調……声音……どこかで――聞いた気が?
……なんだ?
……胸が締め付けられるような――

……あの夜に似ている。
10年前のあの満月の夜、仰向けに倒れたその顔に違和感を覚え――仮面を剥いでその素顔を見た、その時の既視感と。
あの時も思ったんだ。
『見覚えは無い。だが……誰かに似ていると』
もしかしてわたしは、10年前のあの日よりももっと以前に……柏木と出会っている?


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板