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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

78柏木 宗一郎 ◆GM.MgBPyvE:2020/01/13(月) 22:47:40

じっとこちらを見つめる麻生。口を曲げ、横を向く魁人。

「あの撹乱は実に功を奏したよ。意図せずに赤眼となったのは初めてだ。どちらだね? あの手を思いついたのは」
「……僕です。貴方の最大の脅威はその冷静な判断力と分析力、そして観察力。それを削ぐのが目的でした」
「しかし、私が伯爵のフォローに入っていたら、どうするつもりだったのかね?」
「あのタイミングでそれをすれば、掴み取るのは不可能、盾となるしかありません」
「なるほど、どちらを取っても都合がいい。さっきの『詭道』の言葉を……見事実行したわけだね?」
「いえ、今回はたまたま上手く行っただけです」
「……謙遜する事はない」

ごぼりと血が溢れる。グッと強く握りしめられる両の手。
首を横に傾け、溜まり血を外へと追いやりつつ。

「魁人くん……あの時、支給の銃を受け取らなくて……正解だったようだね」
「……え?」
「いまの連携は君のマグナムがあってこそ成立したのだ。撤回しよう。君には重たすぎると言った……あの言葉を」

彼は何も答えない。
頷いたのか、どんな顔をしてその言葉を受け止めたのか、視力のおよそ失われたこの眼で確認出来ないのが残念だ。
床が冷たくなっていく。
唯一感じるのは、この手を掴む彼らの手の感覚のみ。
ついにこの命の火が消えるのか。
だが……まだだ。まだ言わねばならない事がある。

「伯爵を頼むと……佐井朝香に伝えてくれ」

息を呑み、とまどう気配。
そうだ。
佐井朝香が『鍵』なのだ。
彼女が主張するヴァンパイアはウイルス説。
それが我らのコード解明への道しるべに違いないのだ。

≪儂らは滅びん。滅びたくとも出来ん。その訳は――≫

その訳は……おそらくは……伯爵の眼の奥の……あの無数の眼――――――


「彼女は滅びてなどいない。……頼む。至らなかった私の代わりに……彼を……伯爵を救えるのは……彼女しか居ない」

この眼で見届けられぬ事だけが心残りだが、手の感覚も、2人の手の温もりもすでに無い。
氷の海に沈むよう……私はそっと昏い闇に身を委ねた。


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