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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

77柏木 宗一郎 ◆GM.MgBPyvE:2020/01/13(月) 22:42:56

刀と刀を打ち合わせるかの音。
綺麗に両断された弾頭が宙に舞い、そしてこちらを一瞥した伯爵の眼が大きく見開かれた。

「柏木!!」

眼前に視線を戻す。
迫る弾丸の数は「ひとつ」。

「……!?」

掴み取った回転の向きは左。魁人のものだ。
しかし、もうひとつは?
体感速度1.5秒の遅れを以って着弾する筈の弾丸は何処へ?

突如、眼前に散る赤い飛沫。
何かが自分を突き破り、背へと抜ける感覚。
胸元に眼を落す。
ごく小さな射入創より泉の如く湧き出す血液。
いまだその実感はおろか痛みすらない。
動きを止める視界。消える周囲の音。
その中で、不自然なほど大げさに響いた、硬質の音。その数「2つ」。
首を巡らす。
壁面にめり込む着弾痕を確認、その数は「2つ」。
なるほど、彼らが牽制弾を放った本当の目的は――

視界が揺れる。
ゆっくりと……自身の身体が仰向けに倒れて行く。
天井を彩るステンドグラスが眼に入る。
……赤、黄、緑のクリアなカラー。
いつの間にか、硝煙で煙っていたはずの空気が澄んでいる。
冷たいそれが頬を撫で……なるほど、ステンドグラスの端々が欠け、そこから流れこんでいるようだ。
その隙間より覗く、真夜中の星々が煌めいている。

「局長!」「司令!」

麻生と魁人が駆け寄ってきた。
革手袋に覆われた手がこの右手を、もう1人の手が左手を握りしめる。

「……やったな」

精一杯の労いを籠め両人に言葉をかけるが、むせび泣くかの声が返ってくるのみ。

「確認させてくれ。麻生君の弾が先に着弾した、そのからくりを」
「……司令なら……もう見当がついてんじゃねぇか?」
「まあね。押したんだろう? 後ろから」 
「……やっぱな。さすが司令だぜ」

それが答えだ。
文字通り、弾丸を弾丸で『押した』。
右で銃を撃つと同時に、もう片方の銃で麻生の弾丸を狙い撃つ。
麻生の放つ弾丸にマグナム弾の威力とスピードを与えるために。
私の手が弾丸を掴み取ったその瞬間(とき)はすでに衝突した後だったのだろう。弾を見失うわけだ。
同じ攻撃を繰り返すと見せかけ、実はもうひとつ、別の弾を放つ。
当然、イレギュラーな動きは察知される。発砲音も3度となる。
だからあの牽制が絶対に必要だったのだ。動作と音を悟らせぬための。


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