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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
72
:
麻生 結弦
◆GM.MgBPyvE
:2019/12/19(木) 06:38:57
「では早速、論理的思考(logical thinking)の鍛錬と行こう」
「ロジ……え?」
「何故協会が私を『飼育』する事となったのか、君なりに推察してみたまえ」
本物だ。
3年前、僕と魁人の「的」として宛がわれた彼はいま、本物の「教官」として眼の前に立っている。
ずっと……思考能力の無い、ただ無暗に攻撃を仕掛けるだけの「傷物」だと認識してた。
赤く濁った眼差し。欠片の自我も見いだせない。当然その名を聞く事もない。
だけど、ギシリと背もたれを軋ませて腰かける今の彼は、神々しくすら見える佇まいだ。
穏やかで温かな眼が僕を促す。
僕は自然と頷いていた。
彼が促す「理論の展開」。その理論自体が実践の役に立つかどうかは判らない。
けど何かが産まれる気がする。いざという時に役に立つ「なにか」が。
「貴方のような捕捉不可能個体がここに居る。その理由は一つしか考えられません」
「……ふむ。それは何かね?」
「VPの上位個体――幹部或いは長である『伯爵』に命を受けた為」
「根拠は」
「ヴァンプには『より格上のヴァンプに従う』という習性があります」
「私が協会の強力な拘束具に屈したとは考えないのかね?」
「ご冗談を。射出された弾丸をあべこべに武器とし撃ち返す能力があれば、いつでも我々を制圧、逃走可能です」
「では聞こう。VPの『上』そう命じた目的は?」
「そ……それは当然……潜入……。内側から協会の人間を抹殺する為、……です」
トン……トンっと規則的に何かが何かを叩く音。
冷たい天井から水滴でも落ちる音だろう、と思えば違いました。教官の人差し指が、開いた本の「とある箇所」を叩く音だったんです。
「なるほど、『孫先生』も言ってるね。兵者、詭道也。敵を欺く事こそが戦争行為の本質であると」
「……」
「その推察通りなら、君達は今、『死地』に身を置いている。君達には万に一つの勝ち目もないだろうからね」
「……そうでしょうか。いかに貴方が強かろうと、僕らは2人。仲間の死も厭わぬハンターです」
「仲間を盾にすれば勝てるとでも言うのかね?」
「勝てないまでも、相討ちに持ち込めるかと」
「……ならば試してみるかね?」
「……え?」
再び閉じられた本が、机上にポンと無造作に放られる音。
そのピッチ。Aか? Aフラットか? それとも……B? 絶対音感を持つこの耳が、音を正確に捉えられないなんて……!
静まり返った地下室の空間いっぱいに響き渡る、僕自身の鼓動。
魁人の速い息遣い。それに被さる自分の呼吸。
彼がおもむろに足元の弾丸をひとつ拾い上げ、コロリと手の上で遊ばせる。
空気が重い。
グリップを握る左手は、下に下がったまま動かない。指先が冷たい。眼の奥が熱い。喉が……カラカラだ。
「あの時、君達は学んだ筈では無かったのかね? 敵に武器を与える真似はするなと」
司令が一歩、前に出る。その肩越しに、白いドレスの秋桜。少し離れて田中さん、菅伯爵も。
「馬鹿魁人。どうしてさっき、落ちて来た弾を横に弾いたりしたのさ」
「すまねぇ。つい咄嗟にやっちまった」
ヒタ……と弾頭を右手の指先に挟み、こちらに向けて見せる司令。
そうだ。司令が放つ弾丸の威力は並じゃない。あの時も、いとも容易く僕たち2人を同時にぶち抜いたんだ。最新式の防弾着ごとね。
だから決して正攻法で戦ってはいけない。孫子も言ってる。戦いの本質は詭道だと。
「司令、僕たちは『あの時』とは違います」
「ほう……では――楽しませてくれるかね? 麻生くん?」
フっと司令の右の手が霞んだ。
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