したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

71麻生 結弦 ◆GM.MgBPyvE:2019/12/09(月) 22:22:07
理解はできた。
彼は弾丸をすべて掴み取り、そのうちひとつを魁人に投げ返した。
しかも必要最小限の動きでだ。
(あの鎖の揺れを見れば解る。もし大げさに動かせば、必ず鎖がぶつかり合う音がする筈だから)
まさにその「ジャラリ」と言う音がして、眼を向ければぼんやりと煙る硝煙の向こう、彼がさっきの本を手に取っている。
その背表紙には「孫子」の印字。
孫子。
2人の孫子が認(したた)めたとされるその書は、僕たちハンター志願者が一度は紐解く兵法書の古典だ。
頁をめくり、愛おしむように眼を走らせる様子は……まるで自身のバイブル(聖書)でも扱うようだ。
一介のヴァンパイアには決して似合わない。いったい……何者だろう。

魁人はまだ固まっている。
血まみれになった手は小刻みに震え、眼は驚愕に見開かれたまま。

「魁人、傷を見せて」
「……バケモンだ」
「え?」
「奴ぁ片手で……しかも手首の『返し』だけで全弾絡め取りやがった」
「今のが見えたの!?」

カクンと首を縦に動かして、その顎先から雫が1滴ポタリと落ちる。
「指と指の隙間に3個ずつ、合計9個のタマ挟んだその手のスナップで、最後の1個を返して寄越した」
「……すごい」
「ああ。奴ぁ正真正銘バケモンだ」
「うん。君も、ね」

おそらく魁人は、相手の実力を確かめるために敢えて「数を撃てば当たる」的な戦法を選んだんだろう。
ヴァンパイアに勝るとも劣らない動体視力があってこその試みだ。僕には真似できない。
僕に出来る事。それは――

魁人の口から鋭い呻き声が漏れる。今頃になって痛みが襲って来たんだろう。
赤く染まる彼の手をそっと退けると、ぶわりと血液が溢れ出た。
傷は盲貫創。幸い動脈はやられてないみたいだけど、弾が骨か関節に食い込む嫌な音がします。
しかも動かそうとすると腕がビクンと跳ねるし、痛がりようも普通じゃない。大事な神経に当たっているのかも知れない。
魁人の指を止血点に当て、強く圧迫してやった。
息を荒げる魁人の額に脂汗が滲んでいる。

「少し休んでて? 僕に考えがある」
「……どうする気だ?」

僕は立ち上がると、魁人を庇うような恰好で「彼」と向き合った。
本に落としていた眼がゆっくりと僕に向けられ、その焦点が僕の眼に合い、スゥっと細まった時……
何とか堪えましたよ、卒倒しそうになるのをね。

「お尋ねしたいことがあります」
「何かね?」
「……貴方ほどの人が何故?」
「……ん?」
「下っ端ならともかく、幹部クラスを生かしたまま捕える。そんな力を協会が持っているとは思えません」
「……嬉しいね。君は魁人くんと違い……理論派のようだ」

満足気にほほ笑えむ……その仕草に見覚えがあるような無いような。
でも思い出せません。過去に取り逃がした個体のひとつでしょうか?


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板