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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

62柏木 宗一郎 ◆GM.MgBPyvE:2019/11/24(日) 07:02:16

そういえば伯爵が居ない。
と眼をやれば、大隈像の袖(そで)に居た。何故か佐井医師と総理の遺体を抱え込んでいる。
こちらの視線に気づき、一度だけ眼を合わせ、佐井医師の額にそっと唇を触れられた。
こんな時に何をしておられるのか。伯爵なりの義理立てか?
まあ加減が戻られたようで何よりです。

背後の魁人達は動かない。
こちらに狙いすらつけぬのは賢明と言えよう。

「仲間割れはほんま……不毛やな」

壁に背を預ける田中氏、心なしか息が荒い。

「儂らの弱みは銀弾や。どんだけやっても消耗するのみ、とどめは差せへん」

チラリとこちらを見た眼が人のそれに戻っている。

「降参や。奥の手まで往なされた。思った通り、ぬしは戦の天才や。儂のこの手でどうこう出来へん」

発散していた気がその体内に集束していく。
体表すべてを鎧の如く覆っていたそれが消失する気配。
消耗?
違う。その言葉とは裏腹、蓄えは減らず、むしろ充実。こちらの蓄えこそが底を尽きかけている。
おそらく彼はここに来る直前に吸血している。
こうなってみれば、つい先ほどの麗子の誘いを無にした事が悔やまれる。
しかし何故?
決して不利ではない筈のこの時に、白旗など?


ここに至って私は気づいた。
田中氏は現在、気の操作をしていない。
にもかかわらず高周波のダメージを受けている様子がない。伯爵もだ。いつの間にか地の鳴動が止んでいる。

「御免なさいね? わたくしが……あれのスイッチを切りましたの」

衆議院側の廊下より、フワリと白い姿を現したのは……年若き女性。
桜子、いや彼女の妹秋子の忘れ形見。確かその名は――秋桜(コスモス)。

「すまんな柏木。儂の手ではどうにも出来へんよって、ぬしの虎の子……使わせて貰うで」

田中氏が私の肩越しに視線を送り、ほくそ笑む。

まさか。
そんな事が、可能なのか?

背の正中にピタリと当てられた硬い感触。それが二つ。
慣れたガンオイルの匂い。
持ち手から立ち昇る汗の匂い。
見ずともわかる。
私はこの10年間、彼ら二人を鍛えて来たのだ。

「……司令……」

絞り出され魁人の呟き。
そのもう一方の銃口は、彼自身の米神に押し当てられていた。


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