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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
60
:
柏木 宗一郎
◆GM.MgBPyvE
:2019/11/23(土) 13:40:54
気圧される。齢を重ねたヴァンパイアはこうも恐ろしい眼が出来るのだ。
ちょうどその折、背後に新たな侵入者の気配。
息を飲み佇んでいたクロイツ達が駆け寄っていく。振り向かずとも匂いと気配で解る。魁人だ。戦闘員を一人連れている。
田中氏の眼が逸れた隙をつき、マスターの両手首に嵌められた枷を握力のみで砕き割る。
彼は力なくうずくまったまま、短く呻いた。少し乱暴だったかも知れない。
が、鍵の持ち合わせが無いので仕方ない。これで少しは加減が戻られるだろう。
「やはりあの時……ぬしを始末しとくべきやった」
田中氏の声をうっすらと遠くに聞く。
必要な音を出来るだけ拾えるよう、両耳に装着していたイヤープラグの位置を調整する。
「ぬしが言うた、同族を作らぬ理由というのは今時分も納得往かぬ。長きも短きも同じ茨の道や。人も儂らも変わらん。
唯伯爵様の為だけに生きると答えたは良し、だが一見一途なようで……なにか意図も感じるんや。
裏を返せばその言葉、我ら一族の事は意に返さぬとも受け取れる。
ぬしが縋(すが)るものはなんや? 別の何者と伯爵様を重ねてはおらぬか? そう思えてならんのや。
……今しがたもな、伯爵様をつい詰(なじ)ってしもうた。この兵器はあんまりや。なんぼなんでも度が過ぎる。
せやけど開発したんはその方やない、ぬしやったんやな」
田中氏はこの私に問うようでいて、自問自答しているようでもあった。
鳴動の鳴りやまぬ議事堂内。背後では魁人とクロイツ達が状況を確認し合う声。
そんな中、魁人がひと際はっきりと言い放った言葉が、やけに重く胸に響いた。
「俺ら免状持ちにはな、てめぇ自身の行為を思い悩む『権利』なんかねぇんだぜ?」
「それは、君達だけじゃないよ、カイトくん?」
思わず返した私の声で、意識が戻ったのだろう、苦し気に顔を上げたマスターが身体を起こした。
が、高周波の効果は如何ともし難いらしく、再び座り込んでしまった。
申し訳ありません。このイヤープラグは一組しか無いのです。貴方には必要ない。何故なら貴方様は、じきに――
「伯爵様を渡してもらおか。本気で……儂らの破滅を願うとる。そんな奴に伯爵様は任せられん」
「その必要はありません」
「どういうことや?」
「この方の寿命はじき尽きるからです」
田中氏が驚愕に眼を見開く。急激に鎌首をもたげる彼の「気」。
「この方の発作の原因は云わば次元付きの爆弾。10年前のあの夜、私はこの方の胸内に銀の弾丸を仕込んだんです」
「なんてことや……」
「詰み、ですよ。もはや使えるヴァンパイアはこの私と貴方しか居ない」
「なんぼや」
「は?」
「余命は……あとなんぼや」
持って半年。過去の文献を見るに、10年過ぎて生き延びた個体は居ない。
そう答えようとした私はぐっと喉を詰まらせた。見えぬ手に心の臓を掴まれる感触があったからだ。
田中氏は両腕を下げたまま。だがこんな芸当をやってのけるのは彼だけだ。
練った気を自在に操作し、操る技。半年前、田中氏のその技に畏怖した時より……密かに修練を重ねた私だからこそ知る妙技。
「その御方の御命は……如何ほどや聞いとるんやがな」
見えぬ手が、更なる力を籠める。彼は答えを求めてなど居ない。
「其方を責めん。人には役目というものがあるもんや。ただ一つ言っとくがな?」
「……?」
「儂らは滅びん。滅びたくとも出来ん。その訳は――」
「その……わけ……は……?」
「……せやな。冥土でゆるりと思案するが良かろう」
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