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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
54
:
麻生 結弦
◆GM.MgBPyvE
:2019/10/27(日) 17:15:19
「先生! 先生!」
まだぼうっとそっちを見つめる朝香先生の腕を引く。早くこの場から逃げないと、とばっちり、受けちゃいますよ?
でも先生、信じられない言葉を口走ったんです。
「だめ! あたし、菅さんの傍に居たい! 菅さんから離れたくないっ!!」
「ええっ!?」
思わず聞き返して、でもやっぱり駄目かとも思いました。
彼女はもとからヴァンプ志願者だ。そんな彼女が伯爵のあの強力な「魅了」にあてられない筈もない。
先生は僕の命の恩人だ。
一度は死のうと決めた僕を、もう一度明るい場所に連れ出してくれた人だ。
そんな貴方が伯爵の血を受け継いだら……僕たちだけじゃない、貴方も地獄を味わう事になる。
能力の高い個体であればあるほど、その死は壮絶だ。経験上そうだった。
だから先生、今のうちですよ。これはせめてもの恩返しです。
僕は短めに別れの言葉を呟いてトリガーを引いた。
躊躇えば躊躇うほど獲物は苦しむ。だから胸の正中やや左寄りの心臓のど真ん中を正確に撃ち抜いた。
音はクロイツ達の銃音に掻き消された。
先生がくたりと膝を折って倒れていくのがまるでスローモーション。
失敗したと思った。
眼はしっかりと意識を保ったまま伯爵に向けたまま、青ざめた唇が何事かつぶやいているんです。
先生はまだ人間。だから眉間を狙うべきだった。そうすれば即死、苦しむ事もない。
だけど心臓は例え破壊されてもすぐは死なない。
普通の人間は、特に女性は撃たれたと思った瞬間に意識を無くす事が多いから、だから大丈夫だと思ったんです。
先生は美人で、僕の恩人で、だから何となくその顔を汚したくなかった。それも僕のエゴかもしれない。
「ううっ!」
低く呻きながら、先生は赤い絨毯の上を這いずるようにして右手を差し伸べている。
『菅さんのそばに居たい』
そう叫んでいた先生の声が耳に纏いつく。
僕は一度だけ深く息を吐いて、もう一度銃口を向けた。今度は先生の米神を狙って。
でも撃った瞬間、思わぬ人物が飛び込んできたんだ。田中さんでも伯爵でもない。
噴水のように吹き上がる血の飛沫。
首筋の動脈付近を撃ち抜かれ、どっとその場に倒れ込んだのは誰もが知る一国の内閣総理大臣。
その様子を目撃した先生の、その手がうろうろと総理の身体を探り当てる。
その手を掴もうとした総理が一言、二言。
こと切れるのは総理の方が早かった。
僕は混乱したまま動けず、自分の足先が血だまりの中に染まっていく様を、ただただぼんやりと眺めるしかなかった。
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