[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
50
:
菅 公隆
◆GM.MgBPyvE
:2019/10/19(土) 07:31:29
何も言わず、静かにわたしの眼を見つめ返している田中さん。
朝香が初めてわたしに気付いたって眼をしてこっちを見る。
田中さんの肩越しに、赤い光を眼に宿した同胞たち。その数は50弱。
凄い殺気だ。空間が歪んでみえるほどにね。クロイツ達が引き金引いちゃうのも無理ないね。
わたしの為に駆け付けたには違いないけど……いやいや、知ってたよ!
沢口には「助けになんか来ない」なんて言っちゃったけど、仮にもわたしは「伯爵」だ。
こんな風に捕まったら黙ってる筈なんか無いってね。
近場の、たぶんここらの地下あたりで待機してるんじゃないかなあとは思ってたんだ。
ただ田中さんには「万一の時も手を出すな」って言ってあったんだよ。共存案優先。戦争になったら我々には道がないってね。
もちろん如月が地下に兵隊を送らないはずもないから……ぶつかりはしただろう。
人間側は殺す気で来てるから、運悪く被弾した者も居たかもしれない。
それを眼にしたヴァンパイアは当然逆上するだろうけど、でも、でもだ。田中さんなら……そんな彼らを抑える事が出来る。
長く生きた者ほど抑制が効く。それもヴァンパイアだ。
ていうか、田中さんの力を以てすれば、広範囲の防弾も思いのままだ。命を取らずに制圧する事なんか「お茶の子さいさい」だろう。
それなのに――
「答えてください。何故手を出したのか」
わたしの質問は踏むべき手順をひとつ飛ばしている。
財務副大臣の顔の傷は田中さんの仕業だと端から決めつけた上で、その理由を尋ねてるんだからさ。
でもさ、間違いないよ。
鼻と耳を削ぐなんて、そんな真似をする習慣は我々にはない。もちろんまともな人間にもね。
けれども田中さんが生きていた時代――戦国の世にはそんな処罰があったらしいじゃないか。
思いつくの、彼以外に誰が居るって言うのさ。
田中さんは低く唸って……チラチラと赤い火の灯るその眼をゆっくり閉じた。
そして……深く息を吐いて、もう一度瞼を重たそうに上げて、じっとりとわたしの眼を見返したんだ。
「少々、事情が変わりましてな」
「事情? どんな事情が変わったって言うんです?」
「おや……伯爵様は、彼奴らの兵器を……ご存知ない?」
「……知らないよ、兵器なんて」
わざとだとうか。
田中さんが油断のならない……どこか癪に障る言い回しで問いかけて来た。
軽い吐き気と眩暈。
田中さん? よもや……わたしを怒らせようとしてる?
「ほう? わたくしはまた、彼奴らの司令塔であられた貴方様の指示かと」
「何を言ってる? 兵器ってなんなんだ!?」
そうしたら田中さん、答える代わりに下の絨毯に眼を落として、そして上の壁画たちを見まわしたんだ。
そうさ。さっきの眩暈はわたしの中の問題なんかじゃなかった。
壁がまるで柔らかいゴムか何かみたいにぐにゃぐにゃ曲がって揺れていたんだ。
床もだ。立っていられず座り込む輩で場が騒然となった。
逃げろ! と誰かが叫ぶ。
次第に大きくなる振動。同時に耳に飛び込んできたのは針金で金板を引っ掻くような不快音。
酷い音だ。
それが鼓膜を突き破って脳味噌をかき回すのさ。
耳を塞ぎたくても両の手は後ろ手のまま。
両膝を折った。吐き気もそうだけど、襲って来た痛みがあんまり酷くてね。
……どんな痛みかって?
そうだね! 身体中の骨という骨を金ヤスリみたいなザラザラした物で擦られる、そんな感じかな!!
眼の感度を上げていられない。視界が闇に溶けていく。
気が遠くなる、そう思ったとき、わたしの両腕を力強く掴んだ者が居る。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板