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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

37如月 魁人 ◆GM.MgBPyvE:2019/06/17(月) 07:16:37
「がはっっっ!!!」

踏みつけられたのはちょうど胃の真上だ。
まともに体重かけられたらペシャンコの筈だが……奴ぁ加減してやがる。
加減して蹄鉄履いた蹄の先っちょでグリグリやりやがった。
……やっぱ伯爵だぜ。今朝も尖ったヒールでこんな風に踏まれたっけ。
俺ぁ気が遠くなりかけながら……利尻の島が水平線の向こうに浮かんでんのがはっきり見えたんだ。カモメまで飛んでら。
……俺、死ぬんかなぁ。
口から溢れてやがるこの熱いもんも……さっき飲んだコーヒーじゃあ……ねぇだろなぁ。

なあ姫。
もしあの世ってもんがあったら……また俺とあの海岸をひとっ走りしようや。
そのまま宗谷岬まで突っ走って、道東まわって道南までぐるっと回んのもいいかもな。
知ってっか? 根室はすっげぇ朝が早ぇんだと。お日様が水平線から昇るのが見えるらしいぜ。
夕陽じゃねぇ……朝日で真っ赤に染まったお前の髪も……なまら……綺麗だろうなあ……


「いてっ!」

いきなり意識がクリアになった。米神をビシッ! っとやられたせいだ。
首を巡らせハッとしたね。俺目掛けて礫を投げた奴が居たもんだ。
見た目はフリーのライターみてぇな恰好だが、俺にはすぐにピンと来た。司令の報道記者バージョンだってな。
司令! いつの間に! って驚くのが礼儀かも知れねぇが、今更だ。神出鬼没は司令の十八番だかんな。

『そんな所で終わる君かい?』 

司令の口がそんな風に動く。
でもよ、俺はどっかで……死んでもいいって思ってる。姫は俺の家族だぜ? 可愛い妹で、恋人だ。んな相手に本気になれっかよ。
そしたらボタボタっと、これまた熱い何かが俺の顔に降りかかるわけよ。
何かと思って上を見りゃあ……姫が泣いてやがる。
血の涙だ。金に光る眼が……赤い血で真っ赤に濡れてやがる。
姫……俺……俺は……


「分かったぜ、姫。先に行って待ってろ」


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