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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
33
:
佐井 朝香
◆GM.MgBPyvE
:2019/06/14(金) 19:18:50
唐突に音が止んだんで、あたしはやっと耳から手を離した。男はたぶん……廊下の向こうまで吹っ飛んでったわね?
でも大丈夫かしら。だって状況から考えたら彼、ただの人間よね?
クロイツは彼を敵だと認識したみたいだけど……それとも疑わしい目標は迷わず撃てって指示が出てるとか?
指示を出していたリーダー格の男があたしに向かって顎をしゃくったんで、あたしはじっと睨み返した。
でも……そうね。医者として確認すべきことはしなくちゃね。
むせかえるような硝煙の煙には、血の匂いが混じっていて……ゆっくり進むとさっきの男が仰向けに倒れてた。
集中的に胸部を狙ったのね。心臓なんか跡形もないけど、その他の部位の損傷はほとんどない。
ペンライトによる瞳孔の反応はゼロ。虹彩の色は濃い茶色。。
体温は……まだ……36度よりやや高め。
Yシャツのボタンを外してみたけど……やっぱりね。首回りはまったくの無傷。
仕立ての悪くないスーツの襟もとには血に染まった臙脂の議員バッジ。
あたしはそのバッジを襟から外して、じっと見守っていた一同にかざして見せる。
「噛まれた痕は無いわ。この人は人間。代議士の一人だったみたいね」
「……」
険しい顔であたしを見つめる総理。クロイツ達の表情も硬い。
……そうよね。ただの人間……しかも議員の一人を殺してしまった。
「これって……どうなるの? 緊急時のどさくさって事で済むの? 済まないの?」
「済むまいね。無論、居合わせた私の責任だがしかし……事は収束には向かうまい」
「え?」
あたしは総理の視線を追って……そして納得した。
硝煙の煙が立ち込める廊下の向こうに……チラチラと赤く点灯している大勢のヴァンパイア達の眼があったから。
その中から一歩進み出た大柄な人物に、とっても見覚えがあったから。
「何のつもりですか……田中さん」
その人に向けられたその声に、あたし、ハッとなって振り向いた。
いつの間に入ってきたのかしら!
外に居たはずの報道陣やら議員やらが大勢居て……そして、その真ん中に、後ろ手に手を拘束されたままの菅さんが立っていた。
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