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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
30
:
麻生 結弦
◆GM.MgBPyvE
:2019/05/06(月) 07:21:20
「驚きました。散々ヴァンプ達を狩ってきましたが、歴史上の人物に出会ったのは初めてです」
心が浮き立ってしまっている僕がここに居た。
ハンターがヴァンプに心を動かされるなんて許されない事だけど、でも……「千利休」ですよ?
表千家とか裏千家とか僕にはさっぱりだけど、でも戦国ドラマとかに良く出てくるし、この人を題材にした読み物も結構ある。
信長や秀吉だけじゃない、大名にもこの人のファンがたくさん居たらしいじゃないですか。
秀吉に「公儀なら秀長、内々のことは利休に頼め」とまで言わせた人ですよ?
そんな人がどうしてヴァンプなんかになったのか、気になるじゃないですか。
ていうか、聞かなきゃならない。この人の目的、どんなつもりで伯爵を補佐してるのか。
無線のスイッチをONにする。
電波の届きにくい地下からどれだけ伝わるか分からないけど、でも僕の音声をリアルタイムで魁人に伝えなきゃ。
「教えてください。僕を……いいえ、我々人間をどうするつもりなのか」
「……どうする、とは?」
「貴方が秀吉にされた仕打ちを思えば、人間を憎む悪鬼と化すのが自然です。伯爵の『共存案』に賛同するとは思えない」
「なるほど。世間では大公が私に腹を切らせた事になっとりますからな」
田中氏が顎に拳を当て、懐かしむような顔をする。
「……違うんですか? 秀吉の朝鮮出兵に反対してその怒りを買った、そんな風に記憶してましたが」
「死を賜ったは事実ですが……なに、子供同士の喧嘩ですな」
「……喧嘩?」
「然様。あの命は大公の本心ではあらなんだ。頭を下げろ、されば許すと仰せであった」
「……謝っていれば済んだ話だったと?」
「この儂が心内(こころうち)では大公に傅いておらぬと気付いとられた。故に心よりの平伏を望まれたに相違ない。当然でしょうな!
茶席にて私を師と仰ぐ武将もあまたなれば、いちいち物申す茶坊主はさぞ腹に据えかねる瘤(こぶ)であったでしょうな!」
高く笑った田中さんは、とても500歳とは思えないほど屈託のない笑顔を見せて、そして――ゆっくりとその腹を撫でた。
「あの日の朝は忘れもしない、押し寄せた黒雲が朝の日の出を覆い隠す、ほの暗き未明。上空にて唸る風の音は相当なれば、
大振りの椿の枝が灯籠を激しく叩いておりました。屋敷を取り囲む兵達が気の毒に思えるほどでしたな。
立会と介錯に訪れた侍が濃茶を啜る中、かねてより支度していた吉光(よしみつ)の……あのすらりと伸びた白刃を眺め、
ようやくに恐怖というものが腹に沁み申した。いやはや……人を殺める「刃」とは……見るに恐ろしいものです」
「なんてことだ……そこでもし切腹を思いとどまっていれば、『千利休』は無駄に死なずにすんだ……」
たまらず呟いた僕に、田中氏は笑顔を向けたまま。
「同じことを立会人も申された。しかし……儂は心を決め、答えた。この死がいずれ我が茶を崇高なるものにしようと。
所詮儂も麻生どのと同じ、数寄者であったという事よ! 我が茶道と美なる意識を高めんが為、死を選んだのです」
「待ってください、貴方と僕の何処が同じなんです?」
そうですよ、どうしてそこで「僕」が出てくるんですか?
なんですか? その「してやったり的」な目つきは!
「おや? 貴方も殉じようとなされたではありませんか。自らの米神にその銃口を押し付ける姿、なかなかの見物でしたぞ?」
「……え?」
この人はあの日のことを言っている。
サーヴァントになってしまったと気付いたあの日、ハンターにもピアニストにもなれない、ならば死のうと決意したあの日のことを。
「芸の為に死を厭わぬ。それこそが我らが道。人を持て成す、その為の技を磨くが我らが悲願なれば、共に研鑽し合いましょうぞ?」
僕はベレッタのグリップを握り直し、ゆっくりとセイフティをロックした。
この人が一体どこに行こうとしているのか……僕にはやっと解った気がしたからだ。
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