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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

27麻生 結弦 ◆GM.MgBPyvE:2019/04/29(月) 06:26:28
意外な言葉に思わず反応し、固まっていた空気が緩んだことに気づいた。
足元にコツンと当たる硬い弾。たった今僕が撃った筈の弾頭。
瞼を上げる。変わらずの闇の中、黄金色の二つの瞳がこちらを見下ろしている。

「先日は思わず聴き入りましたぞ? 聞き手と一体となる魂の……生命の息吹を感じ申した」

……彼は……たぶん僕のピアノの事を言っている。……なぜ?
殺そうと思えばすぐに出来るこの状況で、なぜわざわざそんな話を?

不意に非常灯がついた。
緑の薄明りに浮かび上がる人影はやはり二つ。桜子に似た女性と、羽織袴姿の総髪の男性。
女性の眼は冷ややかで、その表情には一切の感情がない。
一方で男のほうは、友好的ともとれる柔らかな笑みを湛えている。意思の強そうな目の光にも殺気はない。
声に覚えはあっても恰好を見るのは初めてだ。せっかくですから聞いておこうか。

「かつての西の伯爵。田中与四郎とは貴方のことですね?」

銃を向けたままの僕を、彼はただ黙って眺め、そして頷いた。銃など脅威でもなんでもない、そんな顔して。
さっきから後ろに回していた右手を、さりげなく壁に這わせる。そんな動作に彼は気づいただろうか。

「僕は――」
「無論存じております。孫娘可愛さに駆け付けたあの会場にて、思いがけず我を忘れ聴き惚れた相手故、それはもう――」
「光栄ですが、僕と貴方は殺しあう敵同士。こんな話に意味などありません」

僕は田中氏の眉間に狙いを定めてトリガーを引いた。
当然防ぐはずだと思って撃った、その弾丸は眉間の正中を正確に撃ち抜いた。


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