[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
26
:
麻生 結弦
◆GM.MgBPyvE
:2019/04/29(月) 06:20:05
目を閉じる。
12時に銃口を向けた体勢のまま、視覚以外のすべての感覚を研ぎ澄ます。
けど――音が拾えない。掌や指や、頬に当たる僅かな空気の流れも感じない。
いつもの匂いもしない。あの――ヴァンパイアと対峙した時にするあのヒリつくような殺気の匂いが。
こんな時に支援してくれる筈のコマンドの気配もない。
太陽光を嫌うヴァンプは必ずこの地下通路から侵入するはずって事で、魁人は相当の精鋭を投入していた筈なんですが。
……切り札を出す前に、もう一度。そう思ったとき僕は驚愕したんです。
ただ左手の人差し指でトリガーを引く、それだけの動きが出来なかったから。
かろうじて息だけは吸えるけど、閉じた瞼を上げる事も、背の壁に添えていた右腕も固まったままで。
――もしかして弾丸も? 大気中に固定されているから着弾音が無かった?
そう思ったとき、もう一人の敵の正体がなんとなく解ってしまった。
ブリーフィングで魁人が言っていた恐るべき相手。
リサイタルの夜、魁人やクロイツ達の撃ち込みを指一本動かさずに防ぎきったもう一人の「伯爵」。
僕は半分観念して……そして昔、桜子に見せてもらった虫入りの琥珀を思い出しました。
艶やかで温かい琥珀色の宝石、その中に封じ込まれたアリやハチ、そしてクモの姿を。
あれが今の僕だ。彼らがどんな気持ちであの中に閉じ込められたか、なんて理解したくはなかったですね。
「御一人……ですかな?」
さっきと全く同じ位置から男の声。
一切の音がしないのに、それだけが鮮明で。
「如月とやらも見通しが甘い。この場に居合わせる敵の戦力を見くびりすぎでしたな」
どうやら魁人が配置したコマンドはこの人に制圧されたらしい。
ゆっくりとこちらに近寄る声の主。若くはない、しかしそれほど歳も感じさせない膨よかな声音。
器の大きい、どこか人を安心させる話しぶり。
やはりあの時――桜子の屋敷で伏せていたあの時に聞いた声と同じ声。皆に「田中さん」と呼ばれていたあの――
……ごめん魁人。
僕は詰まれてしまった。
「ですがよろしゅう御座いました。貴方と腹を割って語り合う機会に巡り合えました故」
「……え?」
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板