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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
25
:
麻生 結弦
◆GM.MgBPyvE
:2019/04/14(日) 07:39:03
衆議院議員会館に着いた時、玄関前には警備員が二人立っていた。
太めの男と、細めの女性。どちらも薄茶色のサングラスをしている。
歩道を横切る突風が散らばる木の葉をクルクルと巻き上げる。日差しを照り返す会館の壁が灰色に乾いている。
すでに魁人から指示を受けていたのか、女性の方が意味ありげに目配せして僕を促したから……
だから僕は何の疑問も警戒もしないまま、地下へと続く階段を降りたんです。
天井の照明が映し出す壁や床がぬらりと光る地下通路。当然窓は無いし、駅みたいな宣伝目的のポスターなんかも無い。
ほんとに飾りも何もないんだよ。機能重視の日本人らしい内装だよなあ。
同じ仕事をヨーロッパ人にやらせたら、洒落た石畳とか凝った彫刻の壁にするだろうね。
湿った空気と壁材の匂い。真上にはあのビル群が建ってるなんて、あんまり想像したくはないですね。
遠くまで響く二人分の足音の反響。低めのピッチに落ちていくFフラット。
「この地下道、大手町まで続いてるって本当ですか?」
数歩先を行く案内人に声を掛けてみる。本館(議事堂)に続くオレンジ色の廊下に足を踏み入れた、そのタイミングで。
立ち止まって、黙ったまま振り向いた彼女が、おもむろにサングラスを外す。
僕は声を上げかけた。彼女が桜子にとても良く似ていたからだ。特にあの気の強そうなキリッとした眉と、キラキラした眼がね。
もちろん似ているだけ、本人じゃない。鼻筋は彼女より通ってるし、心持面長だ。そんな彼女はフッと表情を緩めて口を開いて――
「本当よ。さらに言えば……もっと先も――」
「え……?」
一帯が真っ暗になったのはその瞬間(とき)だった。
咄嗟に壁を背にして張り付いた。
吊っているベレッタが硬く腰に押し付けられる。
非常灯すら付かない本物の闇。意味ありげな女の台詞。彼女は……敵とみなすべきでしょう。
「確認を忘れていました。貴女の所属と階級を教えて下さい」
左から右へ顔を向けつつ声を出す。本気で訊きたかったわけじゃない。自分の声をソナー代わりに使っただけだ。
12時に位置する彼女のほか、2時の方角にもう一人。距離は約5m。
人間であれば当然聞こえるはずの呼吸音はしない。冷たい夜の気色。2体ともにヴァンパイアには違いない。
……銃を抜くか否か。
抜きざまに片方を撃ったとしても、もう片方が僕を殺す。僕は魁人のように2挺同時に使えない。
その事を敵も承知してる。3体でなく、わざわざ2体出向いたのがその証拠だ。
しかし……いいでしょう。黙って嬲り殺されるくらいなら、1匹片付けて良しとします。
瞬時に抜き、瞬時に撃った。
僕は左腕を前方に伸ばした姿勢のまま硬直した。
……ありえない。
引き金は引いた。火薬の炸裂音もした。しかし、その後に続く音が無かったんだ。
着弾音も、弾が空を裂く音も。
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