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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

21菅 公隆 ◆GM.MgBPyvE:2019/02/09(土) 07:14:42
「是非お聞きしたいですね。ご自分が作成した法を否定する理由を」

沢口の、マイク無しでもはっきりと聞き取れる張りのある声音。外さぬ視線。
……君のたいした奴だ。
その言動ひとつで日本の運命が決まる。ひとつ間違えば戦場になるだろうこの局面だってのに。

「では逆にお聞きします。吸対法における『ヴァンパイア』とは何ですか?」
「……流石に関連法規は頭に叩きこんでありますよ」
「では仰ってみてください」
「吸対法第2条第2項、吸血鬼(ヴァンパイア)とは、主に人の血液を摂取し栄養源とする、人型の非独立栄養生物をいう」
「excellent(素晴らしい)! 一字一句間違いない!」
「……茶化さないで頂きたい。この短い一文が何だと言んです?」
「おや? この文言に疑問が無いと仰る?」
「疑問も何も……全くその通りじゃありませんか。ヴァンパイアは人の血を吸う化け物だと」 
「そうです。法律上、ヴァンパイアはただその曖昧な一文によって定義されているに過ぎない」
「曖昧ですって?」
「おや? 気付きませんか? 現ハンター協会の元帥ともあろう御方が、字面を追う事しか出来ない?」

ジリジリと頬を焼いていた陽の光が翳る。
……ヒンヤリした空気に混じるのは……微かな「夜」の気配。

「御教示……願えませんか? 当の貴方が御作りになった……その定義の曖昧さについて」
「当時のわたしは大変に勉強不足だったと反省する次第です。生物学的な根拠について全く触れずに済ませてしまった」
「必要でしょうか? 生物学的な根拠など」
「それは必要でしょう。この定義はヘマトフィリア(血液嗜好症)の人間にもそっくり当てはまる」
「ヘマトフィリアの人達は無理やりに人を襲って血を吸ったりはしませんがね」
「どうでしょう。欲しいものを力づくで手に入れるのは、ヴァンパイアだけでは無いのでは?」
「もちろん、暴力を以て欲求の手段とする人間も居るでしょう。しかし彼らは法の下に裁かれ、その行動を規制されます」
「その通りです。我々ヴァンパイアも彼らと同様に裁かれる権利がある。問答無用でこの命を奪う権利は貴方がたに無い」

大型の蝶のような生き物が眼の前をパタパタと横切った。
蝙蝠だ。学校の体育館の裏で良く見かける種だ。彼らの活動時間は我々のそれに近い。

「無い? 御冗談を。問答無用で我々人間の命を奪ってきたのは貴方がたヴァンパイアだ」
「確かに我々には、人を襲いたいという……如何ともし難い衝動がある。しかしそれはこの枷で抑制可能だ」
「人の作った抑制装置などいつか簡単に外れるものです。想定外の事態が起こってからでは遅い」
「我々を原子炉か何かと勘違いなさっていませんか?」
「ある意味、それより質が悪い。貴方がたには人並み、いや時にそれ以上の知能がありますからね」
「知能の有無が問題ならば、アインシュタインやダビンチは危険な駆除対象者、という事になりますが?」
「無関係な人達を引き合いに出すのは止めて頂きたい。彼らは人を襲う凶暴性を持ち合わせていない」
「ですから、我々もこの枷で凶暴性を抑制出来ると言っています」
「……いい加減話を最初に戻しましょう。吸対法を廃止できる根拠は何ですか?」
「簡単です。吸対法自体が日本国憲法に違反しているからです」
「……憲法……違反ですって……!?」
「先ほど申し上げた通り、我々は単なる伝染性疾患を患った人間だ。我々は歴とした日本の国民だという事です。
 憲法第14条、すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的
 又は社会的関係において、差別されない。同法第18条、何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。
 わたくしは吸対法廃止理由を掲げると同時に、この奴隷的拘束を直ちに解くこと、そして本部の速やかなる撤収撤退を要求します」


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