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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

161佐井 朝香 ◆GM.MgBPyvE:2020/11/02(月) 17:30:09

ハムくんの絶叫がホールいっぱいに響き渡って。
それを見た魁人がまたまた笑って。

――ああ! もう我慢できない!!

「ちょっと! いくら何でもやり過ぎよ!!」

矢も楯もたまらず彼の傍に駆け寄ったわ! 舞台の上にぴょんと飛び乗って!
とうぜんじゃない?
彼……顔色も唇もすっかり青ざめちゃて、尻もちついたまま口をパクパク。

そりゃあ……あたしも率先して協力したわよ?
普段頑張ってる彼を喜ばたい、なんて田中さんが言うから? 
真っ先に賛成したのはこのあたし。
でもなに? みんな、あんなに真に迫っちゃって。魁人なんか本気しか見えなかったわ!
ほら、桜子さんのお屋敷で、ハムくんに憑依された麗子に同じことされたでしょ?
あの時の恨みを今こそ晴らすつもりじゃないかって、実は実弾籠めたまんまなんじゃないかって、気が気じゃなかったんだから!
田中さんも田中さんよ! あんなに意地悪い引っ張り方しちゃって!

……ハムくん、見た目は平静を装ってたけど……魁人たちがトリガー引く度に心臓が跳ねてた。
血圧もガクンと下がったり、逆に上がったり。
ほんとよ! 手に取るように解るんだから! いつ倒れてもおかしくなかったんだから!

手首を取って、脈を診て。おでこで熱を確認して。仕上げにその瞳を覗き込んで。
そんなあたしの仕草を、彼は熱に浮かされた顔して……じっと見上げて。
黒い瞳の……さらに奥……
ほんと。魁人の「見立て」は間違いない。沢山居た……あの「眼」はもう……何処にも居ない。

「完璧ね」

え? って顔して顔を上げる彼。明らかに不振の色を浮かべてる。
そっか。そうよね。上手く行って喜んでるのはあたし達だけ。彼にはまだ気付いてない。

「ハムくん、良く聞いて?」

取った手は、じっとりと汗ばんで……とっても冷たくて。

「あたしの能力は知ってるでしょ? 触れるだけで、生き物の身体を治す……そんな力」
「うん。田中さんからも聞いてるよ。それこそゲノムの改変にも至る可能性のある力だと」
「でね? ハムくん前から言ってたじゃない。ヴァンパイアの弱点克服の為に、ゲノム自体を組み替えちゃえばいいって」
「……言ったね。でもそれは無理なんだろ?」
「そうね普通は無理。数十兆個はある細胞を、全部作り替えるなんて出来っこないもの。でも――」
「でも?」
「やってみたら出来ちゃったの」
「まさか」
「それが、ほんとなのよ!」
「……じゃあその人に会わせてよ」
「いるわ、そこに」
「そこ?」

ハムくんが右と左をきょろきょろ見て。

「どこ?」
「そこ。ハムくん自身」
「わたし?」
「そう」
「このわたしが?」
「そうだってば! ハムくんは人間になれたの! それこそ遺伝子レベルで!」


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