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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
157
:
菅 公隆
◆GM.MgBPyvE
:2020/10/29(木) 07:08:19
「そこに立ちな。……そこだ。みな皆サマがたから……良く見える所によ」
トン、と背を押され……観客席に向き直って立てば、一様に見上げる群衆の眼。
その眼は……金でも赤でもないが……表情が一切ない。怖いくらいに。
舞台下に近づいてきた田中さんに、麻生が秋桜を手渡している。
魁人がホルスターのコルトを抜き、ポンと麻生に放って渡す。
わたしを挟み、5mほどの距離を置いた麻生と魁人。
シリンダーをカチャリと外し、パラパラと弾薬を取り出す音、そしてカチリとひとつだけ、はめ込む音。
両者、一発で決める気だ。
つまりは、手足を撃ってどうこうというのではない、問答無用でわたしを殺すという事だ。
この身(総理)を餌に、内閣府に交渉を持ちかける、そんな腹積もりかとも思ったが――
群衆の眼がうっとりとしたものに変わる。期待に満ちた……眼。
いつでも覚悟は出来てるつもりだけど、いざとなると恐ろしいね。自分という存在がこの世から消え去るのがさ。
恐ろしいし、寂しい。
ただの1人も味方が居ないんだ。
あの時はまだ朝香や田中さんがわたしの側に居たけど、今は違うからね。
……わたしなりに、結構頑張ったつもりだけどね。
これは私刑(リンチ)だ。あってはならない事だ。正当なる裁判もなく、第3者も交えず。
まず釈然としないのは……理由だ。何故わたしを始末する必要があるのかって事だ。
……制裁か?
わたしが彼等を裏切ったと……そう認識されているのか?
……そう考えればそうかも知れない。
伯爵ならば、「仲間」の事情を第一に考えるべきなのに、あんな「手枷」を強いたんだ。
あの枷は「獣」を封じるだけじゃない。暴力とは無関係な能力まで削り取ってしまう。
ヴァンプに対する風当たりも相当と聞く。
それを苦にした田中さんに、「自治区」を設けたらどうかと言われた事もある。
ヴァンパイアが自由に生きていける楽園――ユートピアの実現だ。
……それも考えたさ。
だがそれって……本末転倒じゃない?
そんなものは「共存」じゃない。自治区という名の隔離場だ。
仮に国の何処か、或いは無人の島でも誂えて、そんな場所を作ったとして、たぶん問題になってくるのは食糧問題だ。
いまはいい。
冷凍保存じゃない、生の新鮮な血液パック(出来れば採取後24時間以内)なら何とかなるって解ったからさ。
全国の赤十字血液センターと連携して、安定して供給できるシステムが出来あがってる。
日本国民も納得してる。
ヴァンパイアはこの国に貢献してる。
何て言っても夜に動けて不老不死。事故や災害時の貢献度が高いのさ。
だが枷を外した彼等を、「囲い」の中で放し飼いにしたらどうなる?
まず労働の提供が皆無となる。
そんな彼等に国民が血液を供給するだろうか?
となると再び、生きた国民が襲われる事態になる。
わたしは両者が共に生きる、その最善を尽くしたつもりだ。
だがここにいる彼らに取ってはそうじゃない。彼等の「隷属を良しとせぬ矜持」を踏みにじった事は確かなんだ。
だから――
いやいや、勝手に1人で納得してどうする。あくまでわたしの推論だ。
納得も得ず、この世からおさらばなんてまっぴらだ。
ここははっきりと彼の――田中さんの口から聞いておくべきだろう。
「田中さん。訳を……わたしを殺す理由(わけ)を教えてください」
無視されるかとも思ったが、田中さんが視線を返して来た。両腕を組み……口を開く。
「今宵は……何の日かご存知ですかな?」
「……え?」
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