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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

156菅 公隆 ◆GM.MgBPyvE:2020/10/28(水) 17:11:13
だが魁人は動かない。装着してるインカムのスイッチを入れようとしないのさ。

「……どうしたのさ。異論でもある?」
「ああ。もっといい方法があるぜ」
「どうするのさ」
「こう……するのさ」

何食わぬ顔で、くるくるっと左手の銃を回して見せた魁人が、ストンとホルスターにそれを仕舞う。
その空いた手が伸びてきて、わたしの左腕をがっちりと掴む。

「悪ぃな。俺ぁハナからてめぇが嫌いでな」

驚く暇もない、気付けば背に銃口を押し付けられていた。魁人はこの左腕を捩じりあげ、背後を取っていたのさ。
二の句を告ぐのに、数舜を要した。
歓喜の歌が高らかに鳴り響いている。

「嘘だろ魁人……! 君もなのか!?」

返答はない。押しつけらる銃口に、否応なしに前へ――舞台のある方向へと向かわされる自分。
どうやら舞台の上へ追い立てられるらしい。
そう言えば朝香は……? 柏木は何をしている……?

絶句する。無理矢理に首を捩じり眼を向けた……柏木が立っている筈の場所に彼は居ない。
いや……居た。田中さんの向こう隣り。
朝香の膝の上に彼が乗っている。柏木ではない……5歳の息子の姿に戻り、眼を閉じている。
その息子を膝に乗せた朝香がチラリとこちらに向け、しかしそっと眼を逸らす。

「……朝香?」

朝香は返事をしない。

「朝香!? どうしてだ!?」
「恨んでんだとよ、てめぇをな」

問いに答えたのは朝香ではない、この背を押していた魁人。

「……恨んでる?」
「田中から聞いたらしいぜ? てめぇが佐伯をやったってな」
「――な……」

わたしは口を噤んだ。黙るしかなかった。
確かにその件については、あえて話さなかった。
朝香が噛まれるという事態を避けるためにした事だ。
が、「嫉妬」という感情が少しも介在していなかったか?
そう問われれば嘘になる。

「登れ」

言われるまま、階段に足をかける。
一歩、一歩と、懸命に足を持ち上げる。
……重い。ついさっきのはこれの予兆か……?

舞台上へと続く段には、真っ赤な絨毯が敷かれている。
赤い血のイメージ。
ロザリオがチャリンと音を立てる。
赤い血。キリストの血。
頭を振り払う。が、イメージが拭えない。柏木がわたしに与えた宗教観が、この胸に根付いているのか。

ようやくに登壇した舞台。指揮をしていた麻生が、その片腕を横に伸ばし、止める。
歓喜の歌が……途絶える。


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