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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

155菅 公隆 ◆GM.MgBPyvE:2020/10/28(水) 17:10:20
麻生に抱かれたまま、ぐったりと身を預ける秋桜。
気味の悪い笑みを湛えたまま、じっとこちらを見降ろす麻生。そんな彼に、満足気な微笑を返す田中さん。
つまりはそういう事なのか?
……この……最悪の事態を引き起こしたのは彼等だと?
最初からそのつもりでわたしをここに? 両者、結託して?

衝撃に軽い眩暈を覚える。
わたしは魁人同様、麻生の事も信頼している。常に冷静に物事を判断、分析できる、ヴァンパイアハンター「麻生結弦」をね。
もちろん田中さんのことも。
彼は一度もわたしの意見に逆らったことなんかない。
節介を焼いたり、行き過ぎた言動を諫める場面はあるものの、それはあくまでわたしや仲間を思っての事。
共存案に心からの理解を示し、奔走してくれた……あれは全部嘘だったと?

曲がりなりにも、わたしは国家の代表。「内密に」と話しを持ち掛け、わたしと魁人を孤立させる。内閣府は表向きとは言え、わたしを無視できない。
ともすれば強引に条件を呑まざるを得ない状況に置かれる事になる。その為のフェイクだった言うのか?

「アハ……アハハハハっ!……」

気でも狂ったかに声を上げ笑う麻生。桜子を抱いたまま、さっきまで疲労困憊だった筈なのにだ。
舞台ライトの照り返しも相まって、実に悪役のそれらしい。
……OK。話が通じるか否か、試してみてもいいだろう。

「これは……君の仕業なのかい?」

さも可笑しそうに笑っていた麻生がピタリとそれを止めた。
そしてニンマリと……「悪い顔」をして頷いた。わたしの意見を肯定したんだ。
そうか。やはりそうなのか。
じゃああれか。議事堂の一戦で……田中さんに噛まれた……あの効果が、今頃になって出て来たのか。
朝香のワクチンは「元伯爵」の血には勝てなかったという事だ。
……信じすぎた。麻生を。田中さんと言う人間を…………

「君たちは……何をしでかしたか解ってるのか?」
「もちろんですよ! どうすれば貴方が来てくれるのか、どうすれば出し抜けるか。……えぇ……とても……苦心して!」

感極まったかに言い放ち、唐突に麻生が歌い出した。
良く通る、飛び切りのテナーでだ。
彼はピアニストにして歌い手。リサイタルの日は必ずこの手のパフォーマンスを欠かさないと聞く。
曲は交響曲第9番から、「歓喜の歌」。
ワンフレーズ後、観客席の客たちも一斉に口を開く。
550を超える人員が奏でる、壮大なる混声四部合唱。差し詰め、祝勝歌と言ったところか。
その歌声、規模、共に素晴らしい。状況が状況ならば、感動に打ち震えていた事だろう。

……魁人がピリリと頬を痙攣させている。そりゃ……彼はそれを楽しむ筋合いはないだろうからね。
でもまあいいさ。
打ち合わせには絶好の機会だ。

「魁人。表の宇南山に連絡するんだ」

ピタリと身体を寄せ、耳元で囁く……そんなわたしに魁人はむず痒そうに顔をしかめ。

「あ? なんて言やぁいいんだ?」
「このホール全体に仕掛けたアレを作動させるのさ。ブツを乗せた車も用意させてる事だしね」

そうさ。わたしだって、何の対策も講じなかった訳じゃない。
アレ。つまりは改良型高周波発生装置。それを昨日のうちに仕掛けてたのさ。
言うまでもないが、ブツとは手に付けるブレスレットのこと。
自分の開発したそれを信じない訳じゃ無かったけど、想定外の事態に対処する準備は怠るべきじゃないからね。

「……で? その後は?」
「決まってるだろ。無抵抗となった彼等は人形同然だからね。人手を集めて装着すればいい」


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