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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

153菅 公隆 ◆GM.MgBPyvE:2020/10/26(月) 05:16:48
喝采の嵐。
立ち上がった麻生。
っと……大丈夫か? フルマラソンでも走り切ったランナーみたいだけど。
きつく閉じていた眼を薄く開け、手慣れた優雅な礼をした麻生。
更なる喝采。
見れば、隣に白いドレス姿の秋桜が立っている。すらりと伸び切った背に手足。今の彼女は桜子だ。
……オーラが凄い。まさに往年のピアニスト! って貫禄だ。
輝くような笑顔を観客席へと送り、彼女が麻生の腕を取る。そして椅子へ。……なんと2人並んで腰かける。

歓喜のどよめき。
息を呑む。
……いや、待て。
2人?
いやいや、アンコールに答えるの、早すぎないか? 休まなくて……ていうかさ、こっちの準備がまだ出来て……

座る観客。気づけば自分も椅子の背にもたれている。

霞む視界。
頷きあう二人、黒い服の麻生と、白い服の桜子。光り輝くグランドピアノ。
それらが……ぼんやりとした輪郭に変わっていく。
しばしの間。
一瞬だけ、麻生の視線がこちら側に座る誰かと合った……のは気のせいだろうか。

している。
確かに……「音」はしている。
鐘の音だ。沈む意識の中で……耳だけははっきりとその音を捉えている。

さわさわとした波が指先に触れる。
ピリリとした痺れと共に、指先、足先から手足を伝い、背筋を撫で、髪の毛一本一本に染み渡っていく。
繋がっている。
ホール全体が一体になって……すべてが溶け合っている。
座っている筈だが、座面も、肘掛けもそこには無い。
座っている筈なのに、すでに身体は無い。
……いや?
自分という存在を確かに感じる。

寒い。
さっきから酷く寒い。
苦しい。
ずっと前から、呼吸が出来ていない。
無数の……針より細い何かが身体を通り抜ける。
前後左右。
わたしは今、攻撃されているのだろうか?
酷い痛みだ。
だが逃げる事も、身体を捩ることすら出来ない。

攻撃は一向にやむ気配が無い。
叫んでみる。
しかし、纏わりつく鐘の音がどうにもそれの邪魔をする。
手足の痛みはやがて、胸の中心へと集束していく。
熱い。
溶けた金属を流し込まれたようだ。
苦しい。
いったい……いつまで続くんだ?
堪らない
どうにかなってしまいそうだ。

≪もうすぐだから! 頑張って!!≫

……朝香?


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