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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

141菅 公隆 ◆GM.MgBPyvE:2020/09/22(火) 07:07:24

「う〜……さぶ!」

立ち並ぶ高層ビルの一角。
品のいいエントランスホールが透けて見えるドアの前で立ち止まった魁人。
その彼が、ぶるっと身体を振るわせて両腕を擦った。
見れば二の腕にびっしりと鳥肌が立っている。

「……きみの出身、北海道じゃなかったっけ?」
「道民だろうが寒ぃもんは寒ぃの。つかジャケット着てくりゃ良かったぜ」
「わたしの折角のコーデ(ネクタイ)を台無しにした報いさ」
「あ?」

いつだって遠慮のない横柄な態度。
そんな魁人がズズっと鼻をすすりつつこっちを見る。
……仕方ないよね。
ピッチピチの白のTシャツに膝がやっと隠れる丈のカーゴ……そうさ、彼は「伍長」時代の恰好してるのさ。
懐かしき、かのトレードマーク。
黒革の編み上げブーツに同じ革地のグローブが物々しいね。これでもかってくらい自己主張してるパイソンもね。
それについてはまあいい。
別に銃が見えてようがいまいが、免状持ちのハンターには一切の咎めがないからさ。
わたしの不満に明らかに知った眼それこそが如月魁人だ。あの恰好してこそ、実力を最大限に発揮できる。
そりゃまあ……解らなくもない。
今夜は特別。取り巻きも居なけりゃSPも居ない。彼は彼なりに「覚悟して」わざわざ着替えたに違いないのさ。
ただもう少し「しゃんとした」恰好して欲しかったよ。そんな鍛え過ぎた手足を剥き出しになんかしないでさ。
何たって……クラシック鑑賞だよ?

「んだよ。てめぇこそ、何だかいつもと違うじゃねぇか」
「ああ……これ?」

……まあわたしもカッチリとは言えない、カジュアルな白のアンサンブルに着替えていたりする。
裾の長い、首回りにゆったりした襞のある仕立てのスーツ。襟なし、タイ無し。
足元が軽い。布地のスニーカーなんて、履いたの学生以来かな。
グレーの手製マスクと目深に被ったベレー帽はあれさ。世間の目を欺くアイテムだ。

「珍しく朝早くに起きていた朝香に手渡されたのさ。あの時カッコ良かったから〜なんて言われて」
「あの時?」
「あれさ。ミクロの世界の住人になった、あの時の体験」
「俺がヘルパーTだか何だかになっちまったあん時かぁ……ありゃマジでやばかったな」
「……だね」

流石は朝香って言いたいね。
わたしと魁人の間にいつの間にか生まれてしまった妙な連帯感は……あれのせいだ。
あの時の体験が大いに貢献してるに違いないのさ。


玄関の両脇に立つ2人の黒スーツが、意味ありげな視線を寄越す。
ゆっくりと……眼を彼等に向ける。

「念を押すけど、招待客以外は例外なくシャットアウト。例外なく頼むよ?」

黒服の1人が「了解」って風に眼で合図する。
彼の名は宇南山拓斗。あの広い北海道で一、二を争う酪農牧場の御曹司。
道議(道議会議員)も数多く輩出するあの家を飛び出して自衛隊員を志願した変わり者……なんて思ってたけど。
魁人の見舞いに何度も足を運んだ彼を見ていて思ったのさ。
こいつ、秘書官にどうかなって。
いかにも純朴でひたむきで、それでいて凄く頭が良いのさ。機転がきくし、そこそこの駆け引きも出来る。
あの魁人がすっかり騙され……失敬。気に入るくらいだし、本物かも……ってね。
今や魁人より上の「政務担当(主席)秘書官」だ。
悪いね。主席をこんな受付係に使っちゃってさ。他に立ち回りが出来る人材が無くてさ。


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