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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

137如月 魁人 ◆GM.MgBPyvE:2020/08/23(日) 07:23:07
――よし、今朝も……何ともねぇ。

あ? 何してっかって?
見りゃ解るだろ。鏡で自分の眼ぇ確認してんのよ。瞳孔が赤く光ったりしてねぇかってな。
いつ誰が変わってもおかしくねぇ……俺ら人間の中にぁヴァンパイアのゲノムって奴が組み込まれてるって、解っちまったからな。
特に俺みてぇな特殊技能持ちはその気が強ぇって言われてるもんでよ?
一応毎年ワクチンって奴を打ってるから、大丈夫よ〜なんて女医は言ってるが、信用していいもんかねぇ……
ホッとしたついでに頭の毛も丁寧に撫でつけとかねぇとな。
キャップがねぇと、こういうトコに気ぃ遣うぜ。しかも片っ苦しいネクタイとか、上等な黒スーツとか、マジ性に合わねぇ。
ホルスターの場所も懐に限定ってのも気に食わねぇ。長年の癖でつい腰の方に手ぇやっちまう。

冷てぇ大理石の壁に背中を預ける。
真っ黒な天井は、いかにも「高級」って感じの石材だ。あの辺のマーブル模様の曲線が、姫の首と腰のラインに良く似てやがる。
別に貴賓室でも何でもねぇ、只の「手洗い」にカネつぎ込んじまうのは、流石首相公邸と言ったところか。
カチャリと個室のドアがあいて、菅が顔を出した。
黒い壁に白い服が映えるねぇ。その両手首にゃ3重に嵌められた銀の腕輪(ブレスレット)だ。

「どう? 順調?」

ああ、と答えた俺を、奴ぁその黒目が勝った眼でじっと見やがった。
その眼は人間だ。5年前の……伯爵だった時とは違ぇ……あのブラックホールみてぇな吸引力っつーの?
ああいう不気味な気配は全くねぇ。

「今日の空きは? ランチとか出来そう?」
「無理だな。さっき沢口が昼間に打ち合せたい事あるってよ」
「……それは『官房長官』としての用事かな?」
「知らねぇけど。俺経由でアポ取るくれぇだから、公にしたくねぇ案件じゃねぇの?」
「何だろ。朝香がまた医師会と揉めちゃったのかなあ……」

鏡見ながら、ちょいちょいっとメッシュに染めた髪先いじる、その眉間に皺が寄ってら。
相変わらずのチャラいカッコだが、これでも国家の代表だぜぇ?
質問にゃサクっと答える、指示は早ぇ、機転は利く。カオもそれなりな上に、あの二木元総理もご推薦と来りゃあ……歴代の支持率を圧倒しねぇ方がおかしいってか?
が……玉に瑕は奥方だ。しばらく新宿の巣に籠ったかと思えば、勝手にあっち飛び回っては「依頼」をこなしてるってな。
「どんな病気も治す女医様」なんて裏で崇め奉られてまくって引く手あまたらしいぜ。
人間相手だけじゃねぇ、大方のヴァンプ達の弱点まで治しちまう。今やブレスレット付けて無きゃどっちだか解らねぇ奴らがわんさか居る。
お陰で「医者会」なんかに眼の敵にされるわ、お堅い連中は「そんなファーストレディは認めない」云々だわ。
……お陰で気苦労絶えねぇ筈なんだが、奴ぁチラっと俺の胸元に眼ぇやって。

「そのネクタイ、地味過ぎない?」
「あ?」
「そのネクタイ、丸きりどっかのエージェントじゃないか。君は一応『秘書官』なんだよ? ブルーとか、せめてグレーでも」

なんて言いつつ、どっから出したのか水色と青の縞々のネクタイを渡して来やがった。
……こういうトコ、ホント変わらねぇ。

「国会終了後はあそこに行くだろ? 少しは見た目に気を使ってよ」
「おいおい……マジで行く気か? 明日休みじゃねぇだろ?」
「中身は全部頭に入ってるから平気だよ」
「それはそれとしてだ。一国の総理が仕事帰りに秘書と2人きりで出かけるとかどうよ」
「逆に聞くけど。音楽鑑賞する余裕すら無い総理大臣なんて無能だと思わない?」

……減らず口も変わらずだ。
秘書兼ボディーガードの俺の身にもなって見ろっての。
てめぇを狙う人間がどんだけ世の中に溢れてるかってな。

ため息ついて頭かいた俺。したら……見ろよあの眼。奴は全部解ってんだ。そういうとこ、解った上で俺に預けてくる。
自分の命って奴をな。
うっかり奴がまた「覚醒」しちまったそん時、対処可能な人間は俺しか居ねぇ。そう言って俺に護衛頼んだのは他でもねぇ菅だ。
だからな? 俺も悪ぃ気しねぇっつーか、つい奴の我がまま聞いちまう訳なのよ。
――あーあ、行くか! ひっさびさの結弦のリサイタル! せっかく奴が送ってくれたS席のチケットもあるしな!


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