[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
128
:
菅 公隆
◆GM.MgBPyvE
:2020/07/05(日) 06:37:30
「そうなったら君も困るだろ?」
見る間にその顔を曇らせた桜子が、大輪の花か、シダの一種にも似たオルガネラの畝(うね)に腰を降ろす。
麻生達はそんな桜子を見下ろし、フィラメントにかけた指先を凍り付かせたまま。
「もちろん困りますわ! この種(しゅ)はとても……都合のいい『容れ物』ですもの!」
「容れ物……ね」
「えぇ。35億年前からずっと……わたくし達を運び、共に歩んで来た『容器』ですわ。じき……生き物の頂点に立ちましてよ?」
「知恵が回るからかい?」
「そうですわ。犬を従え、虎や象を檻に囲う。ヒトの知恵の前には鋭い牙も並外れた腕力も役には立ちませんわ」
「同感だ。ヒトはいずれ……この地上を統べる種となるだろう」
「その人類が……何故滅ぶなどと仰るの?」
「……だって……人間だけだろ? いとも簡単に『殺し合い』をやってのける種は他にはない。いつだってやり過ぎる。
いつかこの地上すべてを灰にする手段を考えつく気がするんだよ。
無論、君臨した種がいつまでも栄える事は無いっていう……自然の摂理的な理由もあるけどね」
優雅な仕草で桜子が腰を上げた。腰かけていたオルガネラがユラリと弾む。
「貴方には、それを止める手立てがあるとおっしゃるの?」
「あるさ。まずはわたし自身、君の中に侵入する。未使用の塩基配列や、ミトコンドリアDNAの配列を組み替えるんだ」
「組み換えですって!? 何のために!?」
「ヒトを進化させるためさ。とりあえずは『独立栄養生物』にでもなってみようか。少なくとも食料問題は解決する」
「そんな事が簡単に出来るとは思えませんわ」
「君も手伝ってくれれば……出来るさ。必ずね。長い寿命や高い身体能力についても付与しよう。どう?」
優美な顎に拳を当て、考え込む素振りをする桜子。
「本当ならとても……とてもいいお話ですわ。ただ貴方にメリットはあるのかしら? その殻(外観)を捨てる事は、Rabiesという種が消えてしまう事になりませんの?」
「ならないね。『わたし』はいつだって『わたし自身』を記憶してる」
「記憶?」
「たとえ姿形が変わろうと、わたしは『わたし』って事さ」
「それがあなたの仰る『新たな人類』ですの?」
「まだまだ。改変しても発現はしていない。見た目も能力も今まで通り。そんな人間が数を増やしていくのさ。
100年、200年の月日をかけてね。そうしているうちに、濃い、薄いの差が必ず出てくる。
限りなく濃度の濃い――純血も生まれる筈さ。それこそが最初の1人。仮にそれを『真祖』と呼ぼうか」
誰も口を挟まない。集中する視線が痛い。
なんて思って自分の身体を見てみれば……そうか。皮膚――外殻が崩壊を始めている。でも……まだだ。
「彼は記憶の中の「Rabies Virus」を生み出す能力を持っている。いや、厳密には少し変異してるだろうから――
Lamia(ラミア) Virus、とでも名付けようか。このLamiaこそが進化を促す鍵(トリガー)なのさ。
増殖し、血液中に充満したLamiaは身体のあらゆる部位に干渉する。
細胞骨格、神経系の反応速度、体細胞分裂機構に、免疫機構。極めつけはミトコンドリアのATP産生能。
結果、誕生するのがさっき言った理想的な人類――いわば理想種だね。
当然Lamiaはウイルスだから、Rabiesと同様、血液を介して人から人へと感染する。理想種への転換の幕開けさ」
ひどい眩暈を覚えたわたしはその場にへたり込んでしまった。
……流石に無理がたたったか。所詮は一介のウイルスだ。ゆるゆるとこちらに移動を始めるあの水風船は……リソソーム。
毒やゴミを体内に取り込み消化する解毒役のオルガネラだ。
だが手出しは無用だと言いたげに手を翳した桜子が、その手をこちらの方に差し出した。
「いいわ。貴方を受け入れてみますわ。その代わり……裏切りは許さなくてよ?」
「裏切り?」
「えぇ。あくまで『対等』が条件ですもの。取り込まれた貴方が、あべこべに優勢となる行為は決して許しませんわ。よろしくて?」
「よく……覚えておくよ」
握り返した自分の手が……桜子のそれにじわりと滲み、溶け込んだ。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板