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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
124
:
佐井 朝香
◆GM.MgBPyvE
:2020/06/21(日) 05:55:00
流石にあたし、呆気に取られちゃった。
――ちょっと……発想が大胆過ぎない?
――やってやれない事はないさ。彼等も普通にやってる。
――彼等って……HIV(ヒト免疫不全ウイルス=ヒトのAIDSを発症させるウイルス)のこと?
――うん。彼等は自分のRNAからDNAを作って、TリンパのDNAに組み込むだろ?
――生殖細胞はTリンパとは訳が違うわ! 血液中にうじゃうじゃ居るわけじゃないし、侵入する為の鍵も持ってないし――
――あははは! 君にしては弱気だね! 考えても見てよ? 彼等だって……最初からそんなの、持ってなかったと思うよ?
――……仮に侵入出来たとして、ゲノムの転写はどうするの? あたし達、その為の道具(酵素)を持ってない。
――言ったろ? 彼等も当初はそうだったって。ていうかさ、彼等も「わたし達」なんだよ?
あたし一瞬、その意味が解らなくて。
――どうしたのさ。ポカンとして。
――その……彼等もあたし達って、どういう?
――だから、遠い昔は同じウイルスだったって話さ。「このままじゃダメだ」と決意した誰かが変異して、別の種に変わった。
――変異って……決意してするものなの? うっかりじゃなくて?
――さあね。
――さあね……って……
――兎にも角にも行動さ。やろうと思えば何だって出来る。そんな気がする。
――でも……危険を冒してまで試すメリットがあるかしら?
――「ヒト」を甘く見ない方がいい。この霊長類は得体が知れない。さっきから……ざわめく何かを感じない?
耳を澄ます。
――確かに……沢山の声が聴こえるわ。細胞たちの……その中で蠢く小器官(オルガネラ)が囁いてる。
――それもあるけど……もっと大きい。強い「意志」を感じさせる「何か」だ。わたし自身の決意と同じものさ。
――何が言いたいの?
――侮れないって事。いつか必ず弱点をつかれる気がしてならない。だから――
そう云って彼は姿を消して。
それから何年が経ったかしら。
100年? それとも1000年?
音沙汰のないまま、あたしはすっかり彼の存在すら忘れてて。
ある日、彼の読みが当たったの。
18世紀の末に、エドワード・ジェンナーが天然痘の予防液を発見した。
健康な人間に、牛痘(天然痘よりも症状が軽い)のウイルスを植え付けて、あらかじめ天然痘の免疫を強化するという方法ね。
当時、猛威を振るってた天然痘のウイルスは、このせいであっさり絶滅しちゃったのよ。
衝撃だったわ。そんなのあり? って感じ。
もちろん他人事じゃなかった。
そのアイデアを基に、パスツールが狂犬病を予防するワクチンを開発したのが約100年後。
ただあたし達は、天然痘のように滅びはしなかった。
どうしてって云われたら……対象が広すぎたから?
そりゃあ……すべての哺乳類、鳥類にワクチンを打つなんて、無理に決まってるわよね?
でも脅威は脅威。特効薬には違いないもの!
あの迂回路を登るのにかかる時間。発症するまで平均数か月もかかる……その時間差が仇となった。
その間にそのワクチンを打たれたあたし達は、いとも簡単に撃退されてしまった。
感染しても、発症しないんじゃ意味がないわ。
とくにこの国。
海に囲まれた島国だった事が災いした。
BBBと同じね? ヒトや動物の出入りを厳重にチェックするシステムが徹底してて。
例え入り込まれたとしても、その数は少なくて、すぐに各個撃破してしまう。
なら数を増やせって話になるんだけど、でもそれが難しい。
居ないのよ。手っ取り早く感染出来て、手っ取り早く他へと移す、そんな媒体――野犬がほとんど居ない!
そんな時、ふと思った。そういえば「彼」は……今頃どうしてるかしら?
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