[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
121
:
佐井 朝香
◆GM.MgBPyvE
:2020/06/14(日) 05:33:08
走り去る魁人を見送って、しばらく進んで。
いつの間にかピアノの音が鳴りやんだ、そんな時。
ピタリと柏木さんが立ち止まった。
「着きました。この一帯が、貴方が目指すべき到達地点です」
あたし、ぐるりと辺りを見回した。ここは……まだ血管の中……よね?
そんなあたしを見た彼が、壁を眼で指した。
壁。血管壁。その表面には細かな凹凸が沢山。柏木さんの腕がその突起の一つを掴んでて。
あら?
突起の傍に腰かけてるのって……魁人?
……そうだった。「魁人」は一人じゃない。「柏木さん」もそう。
「この向こうが貴方の言う『聖域』ってこと?」
「えぇ。この向こう側にあの方がおられます」
あたしは軽く深呼吸してから……扉の前に立ってみたけど、でも何も起こらない。扉が開かなければ通れない。
「貴方は知っておいでです。鍵(キー)となる言葉を」
……言葉(キー)? 呪文(スペル)? ……ひらけゴマとか?
「A、C、A、U、G…………」
思い切って開けた口から、自然と出てきた4種のアルファベット。
あたしは紡ぐ。総数約12kbの塩基配列(シークエンス)を。
身体が次第に熱くなる。それが……あたし自身のゲノムコードだから?
魁人達が、ざわりとその短い触手を蠢かす。その身体からキラキラ光る分泌物(サイトカイン)が染み出して。
それを浴びた一部のゲートが……ゆっくりとその隙間を広げていく。
朧げにしか見えなかった向こう側の景色が見えてくる。
わあ……綺麗な星が……浮かんでる。あの形、神経細胞(ニューロン)に星状膠細胞(アストログリア)。見え隠れするミクログリア。
つまりは神経組織。聖域って……そういうこと?
「そうです。ここは大脳。思考、記憶、理解、判断……種々の随意運動の中枢。怒りや悦びなどの情動の中枢」
って事は……待って?
この壁、脳脊髄に存在する血管壁は……通常のそれとは全然違う!
文字通り「聖域」だもの、本当に必要な物資しか入れないように制限されてる、とっても厳重に管理された関門(バリアー)よ?
生物学の世界じゃあ、そのシステム名をわざわざ血液脳関門(Blood-brain barrier――BBB)、なんて呼ぶくらいなんだから!
無理無理! ぜったいに無理!!
BBBの関門(トランスポーター)は、低分子(ブドウ糖くらいの?)、かつ決まったものしか通さない!
あたしみたいなウイルスなんか通してくれるわけがない!
運よくその隙間から潜り込めても、すぐにポイっと追い出されちゃうわ?
そうで無くてもあのおっかないミクログリアさんに食べられちゃったり?
「おい、せっかく開けてやったのに、通んねぇの?」
魁人がため息ついてこっちを見てる。
「行って差し上げて下さい。あの方には貴方が必要です」
「大丈夫なの? ほんとに?」
あの素敵な笑みを返してくれた柏木さん。その言葉も表情も……あの時と同じ。議事堂にあたしを送り出したあの時と。
あたしは身体を屈めてゲートをくぐった。
「来たね?」
上下左右、ぐるりと満点の星が漂う……その真ん中に、腕を組んだ菅さんがポツンと一人、立っていた。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板