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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

119佐井 朝香 ◆GM.MgBPyvE:2020/06/06(土) 07:27:33
ここは体内。
新たな宿主の体内。
と言ってもまだ浅い。傷ついた皮膚の表層に潜り込んだばかり。
あたし、いいえ、「あたし達」はゆっくりと歩を進める。
歩と言っても足がある訳じゃないから……流れに身を任せて何となく行きたい方向に意識を向けるだけ。

あちらこちらに触手のような枝が伸びている。
ヒタヒタと探るようなその動き。躱しながらその大元を辿れば……あった。あれが樹状細胞(dendritic cell)ね?
樹状細胞は外界と接する粘膜面や皮膚に配置された哨戒兵。敵を見つけて殺すのが役目。
身体が透けて、中の核とか小器官がバッチリ見えてる。
綺麗……。透明な触手が無数に伸びて、フワフワしてる。水族館で見るクラゲみたい。
なんて見惚れていたら……触手に身体が触れちゃった! どうしよう!

大勢の「あたし」が「あたし」を見る。
あたしは青くなった。捕まったら終わりだもの。
そうよ、あたしが食べられるだけじゃ済まない。樹状細胞は死んだあたしの身体をバラバラにしたうえで「とある場所」へと運ぶの。
とある場所とはすなわち、最寄りのリンパ節のこと。
「詰所」みたいな場所ね?
武器職人(Bリンパ)や訓練兵(ナイーブTリンパ)、彼等を補助するヘルパー(ヘルパーTリンパ)達の待機場所。
樹状細胞は彼等にあたしの身体の構造を詳しく教えるの。
あたし達の弱点は何か、殺すにはどうしたら効率的か。どんな武器が有効かって。

そしたら……どうなるって?
殺戮部隊が編成されちゃうのよ!
只の訓練兵だったTリンパは、あたし達の天敵(キラーTリンパ球)に変化する。
Bリンパはあたし達を確実に殺せる武器(特異抗体)を大量に生産する。
だから……捕獲されたら終わり。せっかく侵入出来たのに……ほんと、残念。

あたしは樹状細胞の本体を見上げた。静かに揺蕩う……あたしより何十倍、いや何百倍も大きい巨大なcell(セル)。
どうしてかしら。
こんな時って時にあたし……そのcellが柏木さんに見えたの。
なまじ、あたしにその手の知識があったからかしら?
それが……高等生物だけが持つ複雑な免疫システムにおける……有能な司令塔だってことを知ってたから。
柏木さんもそうだった。
いつも現場に出て、自ら情報を集めたり敵を撃退したり。麻生君や魁人を鍛えてハンターに仕上げたり。
そんな柏木さんとその有り様が似ていたから。

『行って下さい。あの場へ』
『あの場って……あそこ?』
『えぇ。あの御方が待っておられます』

あたし、その「柏木さん」と自然に会話してた。
ふわり……と彼の触手があたし達の身体を優しく包み込む。

『どうして? どうしてあたしを食べないの?』
『……食べる?』

ゆっくりと前に進みながら、「ふふっ」と彼が笑った気がした。そんなとこも柏木さんそっくり。

大きく破損した巨大な管が見えてくる。
さらに近づいて見れば、それはトンネル。中から沢山溢れ出てくるピンク色の……そっか、あれは血管ね? 
ピンク色のは赤血球。もちろんあたし達より遥かに大きい。
決壊したそれを堰き止めようと、ぞろぞろ集まってるあれは血小板ね?
結構なスピードで穴が塞がれていく。

――あ!
何か騒ぎが起こってる!
赤血球より二回りも大きい透明な何かと、それよりも小さい(あたしよりは数段大きい)楕円形の何かが戦ってる!


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