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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
114
:
菅 公隆
◆GM.MgBPyvE
:2020/05/09(土) 06:42:11
少女が如月の手を撥ねつけたり、悪態をついたりする様を眺めるうち、
ふとベランダの手すりを白ネズミが一匹駆け登るのが目に映る。よくよく見れば、目が紅い。
アル(アルジャーノン)? ……いや、アルはあの時柏木に――
何とはなしに首筋に手を添える。柏木の乱杭歯が突き立てられたその場所は……まだ沁みるような痛みを伴っている。
「好いている」と彼は言った。このわたしの事を……とても……好きだと。
あのひた向きな眼。抱き寄せる熱い腕。
下僕が主(あるじ)に持つだろう「敬愛」や「思慕」とは違う……「情欲」の類だ。
それを知った上でそれを許した。いや、喜々として受け入れたと言ってもいい。
わたしは彼の――島民の仇である父の息子。
それを忘れ、わたしの強引な誘いを受け入れ……その身、その過去すべてを捨て働いてくれた柏木。
だから応じたのはそんな彼へのせめてもの報いであって、決して彼と同じ好意を抱いた訳じゃない。
それなのに、今だ「それ」を思い出す度に……身体が火照るのは何故だろう。
彼に折られた右肩も……ずきずきと疼く痛みが苦痛じゃない。むしろ……恍惚。
いったいわたしはどうしてしまったのか。
わからない……まるで……操でも奪われた気分だ。
如月と少女はまだじゃれあっている。仕舞いにはあっち剥いてホイ的が遊びをやり出した。
「お次はハムくん、あなたの番よ?」
ドクンと心臓が高鳴って我に返る。気づけば朝香がすぐ傍に立ってたのさ。
「助かってくれて本当に良かったわ。柏木さんのおかげね?」
「……なにそれ。まるで柏木のお陰でわたしが助かった、みたいな言い方するね」
「えぇ、まさにその通りだもの。柏木さんが血を吸ったのは死なせる為じゃない、生かす為だったんだから」
「……どうしてだい? 彼はヴァンパイアの撲滅を願ってた。わたしを生かせばそれに反する事になるんじゃないかな」
「……んー……どう説明したらいいかしら……」
顎に手を当て、しばらく首を傾げていた朝香が、二ッと笑った。
両手を伸ばし、そっとわたしをベッドに寝かせた彼女は、あろうことかその唇をわたしのそれに押し当てたのさ。
流石に驚いたね!
キス、なんて行為は初めてだったからさ!
いやいや、さっきだってしてないよ。ヴァンパイアは基本、キスなんかしないのさ。
鋭い牙が邪魔って事もあるけど、そういう行為自体にムラムラなんかしないんだ。しかも人前でどういうつもりなのさ!
如月が麻生の娘にあわてて目隠しをする様子が眼に入る。
わたしの方はまあ……思ってたより「いい」って言うか……拒否する理由もないしで……眼を閉じてそれに応じる形になった。
しばらく時計の秒針の音だけが耳に届く。そっと……彼女が唇を離す。
「どうだった?」
「……どうって?」
「良かったでしょ」
そういえば……と口元に手をやり、ふと牙が……犬歯の先が尖っていない事に気が付いた。
まさかわたしは……
「そう。そのまさかよ。ハムくんはもうヴァンパイアじゃない」
そう言って彼女が胸元から取り出して見せたのは黒く変色した未使用のパラベラム弾。
「それは?」
「柏木さんがハムくんの心臓から抜き取ったものよ。気づかなかった?」
言われてみればと意識をそこに向ける。確かに……軽い。冷たく重い、あの存在を感じない。
この治癒していない右肩も、人間であるからこそだ。
喉の渇きも……いつもと違う。ひどく欲していたあの時は……我が身を呪ったものだ。血を求めて闇夜の中を彷徨う自分を。
だが今は……求める対象が血ではないとはっきり解る。限りなく清涼な……
「そうだ水……水が欲しい」
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