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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

113如月 魁人 ◆GM.MgBPyvE:2020/05/09(土) 06:18:56
「肺?」
「そうよ! ついでに言えば、肝臓も一部破裂してた。あなた、ヴァンプ化したお馬さんに蹴られたんですって?」
「へ? なんで知ってんの?」
「救急車両に同乗した拓斗って子に聞いたわ。思い切り踏みつけられて吐血したって。それを錠剤で抑えたってほんとなの?」
「まあな。いざって時に飲めって協会から支給(よこ)される薬があるんでね」
「止血剤と……痛み止めね?」
「ああ」

ツカツカっとハイヒールの音響かせて、俺のベット脇に立った女医。またドヤされるかと構えた俺。
女医の白い手がスッと伸びてきて、俺の手首を持ち上げた。
その仕草があんまり優しかったんで、思わず女医の顔見上げたぜ。
で呆気に取られちまった。あんまり真剣な顔してんだもんよ。

「そのハンター協会も曲者ね。あなたの血液からモルヒネに似た成分が検出されたわ」

いつもの女医の声じゃねぇ。か細いかつ震えてやがる。
細くてきれいな眉毛振るわして……ひっくり返した手の平じっくり眺めてから、俺の眼を正面から覗き込んだ。

「顔が赤いわ。脈も速いし、黄疸も出てる。無理はダメ。あなたはディスポ(使い捨て)じゃない、血の通った人間なんだから」

なにこれ。この人、すっげぇ綺麗じゃん。このドキドキも十中八九あんたのせいだよ。
俺は掛布団を肩まで引っ張りあげながら、くるっと結弦へ向き直った女医を眼で追った。
奴の脈も診るつもりなんだろ、手を取って、仰向けの結弦に覆いかぶさるようにしてかがみこむ。
おいおい結弦の奴、何処に眼ぇ向けていいか困ってら。
先生よぉ……どんだけ自慢か知んねぇけど、その胸の谷間、隠した方が互いの為だと思うぜぇ?

「結弦君? あなたは田中さんに血を吸わせたわね?」
「え? どうして……って、そうか。秋桜(コスモス)に聞いたんですね?」
「そうよ!」

得意げに肯定したのは女医じゃねぇ、どっかから入って来た女のガキだ。
小生意気な顔して頷いてぶんぶん首を縦に振るこいつぁ……誰だ?
俺の視線感じたんだろ、やおらガキが振り返ったかと思ったら俺の向かってベー! っと舌出しやがった。

「あ!?」
「よしなさい秋桜!」

意外にも窘めたのは結弦。

「見た目はチャラいかもだけど、一応凄腕のハンターなんだよ? お父さんの大事な友人でもある」

チャラい? 一応? んでもって……お父さん? お父さんって……結弦のこと?

「ああーーー!! まさかこいつ、あん時のガキぃ!? 何でまたちっこくなってんだ!?」
「ガキじゃない! 秋桜(コスモス)よ! 父さまあたし、こういう口が悪くて失礼な人大っ嫌い!」
「んな……な……」

プチッと米神の辺りで音がした。ここいらで何かが切れたに違いねぇ。
っつっても……俺もハタチを過ぎた大人の男だ。しょんべん臭ぇガキの台詞を真に受けたりしねぇよ、馬鹿!
俺とガキとが戯れてんのをよそに、喜々として結弦への説教を再開する女医。俺ぁガキのお守(も)りか?

「どういうつもり? いくらワクチン打ってても、新たな感染を防ぐ保証は何処にもないのよ?」
「そうなんですか?」
「そりゃそうよ。獲得した抗体量を上回る量の感染源が侵入したら、再感染の可能性は十分にあるわ」
「……すみません」
「解ればいいのよ。でももし異変を感じたらすぐに報告して?」

いちいち頷いて顔赤くする結弦。
なるほどこりゃあ……魔物だぜ。患者の男どもがイカれるわけだ。


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