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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫
101
:
菅 公隆
◆GM.MgBPyvE
:2020/03/10(火) 07:11:26
「如月! それを寄越せ!」
「……あ? 何をよこせって?」
「それだよ! そこに落ちてるロザ――」
「ハムくん危ない!」
鷲の手状に開かれた掌底が目前に在った。狙いは――喉笛!
躱せない!
刹那、右横から体当たりを喰らった。
朝香だ。まさに間一髪。
彼女に突き飛ばされてなかったら、間違いなく喉を握り潰されていただろう。
だがダメージはゼロでは無い。掠りもしなかった喉元が焼けたように熱い。これは――気功!? 田中さんと同じ技を!?
が呑気に分析しても居られない。柏木が朝香へと視線を移したんだ。
「おらよっ!」
ようやく気付いた如月がロザリオを放って来た。
「遅いよ!」
「るせぇ!! てめぇも相当の『ちゃかし』じゃねぇか!!」
「チャカシ!?」
鎖をキャッチしながら、思わず聞き返す。同じ言葉をかけられたことがあったのさ。
わたしはスピーチの際に身振り手振りを交える癖があるんだが、そのせいで演題の水差しを落として割ってしまうんだ。
あの時は2度もそれをやって……
「意外とあんた、チャカシだねぇ」なんてボソッと言われたのさ。最後の片付けの時、掃除のおばちゃんにね。
すぐ後ろに控えてた柏木が「この地方の方言で、慌て者、うっかり者の意味です」って耳打ちしてくれてさ。
柏木によれば、地方出身者は標準語のつもりで堂々使ってしまう言葉ってのがあるらしくてさ。
噴き出しちゃったよ。
かく言う当の本人が、たまに使うあの言葉に気付いてないんじゃないかってね!
あれは確か道南地方を遊説してた時だ。如月の出身も北海道。つまり訳せば「このわたしも相当のうっかり屋」。
なるほど、さっきコルトを置き忘れた如月を馬鹿にしたからね!
「恩に着るよ!」
そんな柄にもない台詞が吐いたわたしにはまだ余裕があった。これさえあればもう大丈夫、なんて余裕がね。
朝香に手を伸ばした柏木の眼前にロザリオを尽き出す。
赤い眼が更に見開かれ……その手がロザリオを掴む。この右手首ごと。
生木を裂く音がしたのはこの時だ。
一瞬、何が起こったのか解らなかった。
右肩を支点にし、折られたのだと認識した時には、荒々しく抱き寄せられていた。その腕はとても熱い。
次第に襲う激痛にしかし、声を上げる事すら出来ない。
肋骨の隙間から差し込まれた手がこの心臓を握りこんだんだ。
すべてが熱かった。首の根を掴む手も、喉元に寄せられる吐息も、何もかも。
「……そうだったのか。君の執着の対象は……ロザリオなんかじゃなく――」
唇と舌先を動かしただけの言葉が、柏木の耳に届いたのか。
「……ばり……好いとるばい……」
まさに柏木本人の、「意思の宿った声」が遠くに聞こえ、わたしはすべてを許した。
「……悪かった」
そんな言葉しか出てこない。
薄々感じては居たんだよ。君がわたしに欲情してたって。
今まで我慢させてきたのはわたしの方だったんだ。いいよ……もっと吸いなよ。
そうだ、そうやって……最後の一滴まで吸い尽くしてくれて構わない。
間違い……ないよね。
血を求めるのはヴァンパイアの本能だ。これは君に取っての最高の求愛行動、そう受け取って間違いない。
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