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【東京ブリーチャーズ】那須野探偵事務所【避難所】
113
:
那須野橘音
◆TIr/ZhnrYI
:2017/03/16(木) 21:27:40
「それじゃ、ノエルさん。お疲れさまでした、ゆっくり休んでください」
戦いの後。いつも通りに仲間と別れ、塒のある雑居ビルに戻ってきた橘音は、やや後方を歩くノエルの方を振り返った。
今回はいつもより過酷で、かつ収穫のない戦いだった。これ以上の呪詛の伝播を阻止こそしたものの、失ったものはあまりに多い。
そして、新たな敵の出現。するべきことも、知るべきことも、何もかもが山積している。
が、今はその全てを後回しにして、傷ついた身体と心を癒すことこそが急務だ。
直接の戦闘をとことん避け、一見平気そうに見える橘音も、肉体に深刻なダメージを受けている。
仲間との帰路の途中、下腹部に重い鈍痛を感じつつそれをおくびにも出さずにいたが、そろそろ限界が近い。
ノエルが店舗兼自宅に入るのを見届けてから帰ろうと、彼の姿を見る。
けれど。
>橘音くん……ありがとう。おかげで僕の言った事、嘘にならずに済んだ
ノエルが意を決したように、そんなことを言ってくる。
一瞬なんのことかと思ったが、それが祈に告げたコトリバコのことだと分かると、ああ、と小さく口を開く。
そういえば、ノエルは八尺様との戦いの後も、意気消沈する祈に対して慰めの言葉をかけていた。
橘音は小さく唇に笑みを湛えると、気取った様子で口を開いた。
「ノエルさんはウソなんかついていませんよ。あれは真実です、ボクはただ本当のことを言っただけです」
「探偵とは、真実を探求する者。数多の虚構の中から、本当のことだけを暴き出す者――なのですから。ね?」
いつもならそれで別れるところだが、今日はどうにもノエルの様子がおかしい。
熾烈な戦闘によってケ枯れ寸前だということの他に、まだ何かあるような気がして、橘音はなかなか事務所への一歩を踏み出せなかった。
そもそも、あのバカがつくほど陽気なノエルがこんなに殊勝なことを言うとは、それ自体が天変地異の前触れのようなものであろう。
「……どうしたんです?ノエルさん。いつものノエルさんらしくな――」
>それと、君の天井は僕の床だから――
>僕はバカだしあんまり役に立たないかもしれないけど……160%橘音くんの味方だから……
ノエルの言葉に、笑ってやり過ごそうとした語尾がすぼまる。
仮面の探偵と見目麗しい雪妖の青年が、束の間無言で見つめ合う。
幾許かの間を置いて、橘音は軽く息を吐いた。
「知ってますよ、そんなこと」
「アナタがボクの味方だなんてことは。とっくに知ってますし、わかってます。ずっと、ずうっと昔からね。だって――」
そこまで言って、橘音はマントの内側から白手袋に包んだ両手をノエルへと伸ばすと、
「アナタとボクは、ともだち……だから」
そう告げて、にっこり笑った。
それは、遠い過去の記憶。忘却の彼方に消えかかった、古いメモリー。
ふわふわの毛皮に、もふもふの尻尾。共に雪の中を駆け回り、丸くなって眠ったオモイデ――
他のブリーチャーズと違い、ふたりの間に契約はない。金銭の授受も、人間社会で生きていく上での何らかの便宜もない。
けれど、互いの危機には命を懸ける。力の限り戦う。
理由は簡単。――ともだち、だから。
>だから……橘音くんのこと全力で応援するからね!
>僕の勘ではもうフラグは立っている……あのタイプはあとは押して押しておしまくれば落ちる!
>言ってくれれば偶然を装ったセッティングとかいくらでも協力するから!
>大丈夫! 渋谷区に住民票移せば何も問題ないよ! それじゃっ!
「なんの話ですかっ!?」
しかし、美談では終わらないのがノエルのノエルたる所以である。
橘音は残った力で渾身のツッコミをした。ズビシ!と手刀の甲でノエルの胸元を叩く。
そんな他愛ない遣り取りこそが、何にも増して愛しいのだと。
そう、自ら確かめるように。
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