したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【大正冒険奇譚TRPGその6】

85◇u0B9N1GAnE:2013/09/02(月) 22:45:27
 


――生還屋の頼みは特に支障なく聞き入れられた。
拒否権などフーにとっては無いようなものだったし、
結界の維持はジンの代わりに、彼が寄越した埋伏拳が行える。
土行は元々、要石のように『土地を保護する』という性質がある。
また水を堰き止め、吸収する性質も、水行の応用で生み出された結界の維持には効果的だ。
それでも無人には違いないが、埋伏拳の子鬼達曰く――

『ジンガ本気デ三発ブチ込ンデ、クタバラネー奴ガイルッテ?
 ソリャ、ムシロ見テミテーナ。連レテキテクレヨ』

――との事だった。

ともあれ君達は、寺院を出て暫く歩く事になる。
王宮に着いてからは日本への依頼が本当にあったのかを確認、武器の一時預かり、
その間に諸々の手続きが裏で行われたりと、煩わしく時間はかかったが滞りはなく――君達は清王との謁見が許可された。

謁見の間への道には、両脇に背の低い石柱が並んでいた。
石柱の頂上部には陰陽五行の象徴、五芒星が刻まれている。
ある柱はそこに炎が灯り、また別の柱の上には方位磁針のように緩やかに回転する刃が浮かんでいた。
水、木、土を掲げる石柱も同じようにある。

五行との感応を測る事で、敵意や武器の存在を感知する機構だ。
王への敵意があれば炎がそれに感応して燃え盛り、
凶器を隠していれば刃がそれを持つ者を刺し示す――と言った具合だ。

無事に大廊下を抜けると、謁見の間へ繋がる扉が独りでに開き――

「――や。や。よく来てくれたね。どうもありがとう。
 なんか色々大変だったみたいだけど、怪我はなさそうで良かったよ、ホント」

王座に座したその男は、どうにも覇気に欠けて見える人物だった。
体は大柄、着衣も紅と金を基調とした豪奢な物で、薄金色の頭髪と、
部分部分を見る分には如何にもそれらしい風体をしている。
なのに雰囲気だけが、不釣り合いなほどに柔和だった。

「フーちゃんも、最近どう?捗ってる?ほら、アレ……研究の方さ」

和やかな笑顔はそのままに問いかけ――フーは答えられない。

「……なんか、胡散くさない?あの王様」

あかねが小さく零した。
フーがぎょっとして目を剥いたが、王には聞こえていない様子だった。

「んー……もしかしてちょっと残念な感じ?ま、仕方ないよね。
 今ボク達、研究どころじゃないもんねえ」

「あ、でもお客様にはそんな事関係ないからね。
 誠心誠意おもてなしするつもりでいるから心配しないでね。
 ……もっとも」

「その前に面白い土産物を披露したくて仕方ないって顔した人が、いるみたいだけど。
 うん、いいよいいよ。ホラ、ボク王様だからさ。そういうのは慣れてるから」

王が薄っすらと笑みを浮かべる。
唇と双眸が描く曲線には、和やかさとはまた違う雰囲気が宿っていた。
その視線が生還屋に向けられる。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板