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【大正冒険奇譚TRPGその6】

74◇u0B9N1GAnE:2013/09/02(月) 22:38:20
【寺院にて】

>「この腐れ外道が!てめーが誰に何したかぁ!!!」

頼光が叫ぶ。憤怒を露わにして襲い来る彼に、フーの顔が見る間に青褪める。
苦味を帯びた表情が彼の心中を語る。
やはりこうなったか――だが、黙って殺される訳にはいかない、と。

こうなった時の為に、袖の内側には何枚もの符を隠してある。
袖に収めた右手の指先がその内の一枚に触れた。
鳥居の目の治療に使った符――『盲目』を移し、封じた符。
これを使えば頼光を躱す事は出来る。
だが同時に『自分はいざとなれば『そういう手』を使うつもりだった』と悟られる事になる。
そうなったら後がないかもしれない。
だからフーは――符を抜かなかった。

>「気持ちは分かるがぁ!!!」

そして直後に、双篠マリーが頼光を背後から押し倒した。
そうだ。自分にはまだ利用価値がある。誰かがこうしてくれると、信じていた。
フーは汗の滲んだ右手を符から離し、深く息を吐く。

>「開き直ってよかったな、下手にとぼけていたなら、私もコイツと一緒にお前を殺していたところだ
 …私から聞きたいことは一つ、今回の災害の原因、これは眠りから覚めた不死の王による復讐からか
 それとも何かしらの軍事計画の失敗によるものか、それとも一個人の私利私欲によるものか
 もしくはそれ以外か、私はそれが知りたい」

「……どれも間違いじゃない。だけど元を辿れば……原因は俺だ。
 君達が地下室から持ち帰ってくれた物があったろう。アレは俺の、不老不死の研究資料なんだ。
 清はもう直に大陸を統一する。だから王は次の事を手がける事にしたんだ」

貿易体制の整理、首都近辺の治安回復――今回の依頼である遺跡の保護も、その一環の筈だった。

「……もう察しは付いてるんだろうけど、王は俺のような宮中の道士に一つの使命を課した。
 王は全きお方だ。もしあの方がずっとこの国を治めてくれたなら、清の栄華はきっと永遠に続く……。
 王自身もそう思ってる――だから俺達に、不老不死の法を見つけ出すように命じたんだ」

フーが懐から数冊の書物を取り出した。
マリー達が地下室から持ち帰ってきた物だ。

「これの為に、君達には苦労をかけた……だけど実は、これには何の価値もないんだ。
 ただ未練がましく縋り付いてしまっただけで……俺の研究はまるで成果を上げてなかったんだよ。
 だから俺は……『既に完成したもの』を、探す事にしたんだ。
 術師としては最悪の選択だ。それでも……どうしても俺が王に不老不死の法を捧げたかった」

「それで目を付けたのが……君達がフェイから聞き出した、不死の王の伝説だ。
 俺は流れを操る術が使える。風と水……風水を。遺跡の位置を見つけ出すのは簡単だったよ。
 不死の法なんかより、ずっと……けれど俺一人でその遺跡を掘り起こすなんて出来る訳がない」

「だから今度は宮中や軍に風説を……噂を流した。北の戦線付近にヤバい呪物の眠る遺跡がある。
 北の連中はその情報を既に掴んでいるかもしれない……ってね。そうすりゃ軍が動く。
 呪物絡みなら、俺の専門だ。俺は王付きだけど、俺の弟子を軍に貸すって形で遺跡に送り込める。
 ……全て、失敗に終わったんだろうけどね。これが事の顛末だ」

語り終えると、フーは項垂れて深く嘆息を零した。
だが語らねばならない事は、まだまだ残っている。


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