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【大正冒険奇譚TRPGその6】
67
:
倉橋冬宇子 ◇FGI50rQnho
:2013/09/02(月) 22:31:59
>>55-58
頼光が地面を這う蔦に放った炎が、男の道士服に燃え移る。
ブルー・マーリンに殴り飛ばされ、地面に伏したツァイは、それでも尚、諦めるということをしなかった。
上半身を起こした男の、失った右腕に迸る鮮血。
残った左腕にも銃弾を撃ち込まれ、拳を握ることも出来ぬ彼は、左の掌を二本の鉄杭で貫き、結界の基点とした。
>「結界を……移動に使えるのは……君だけでは……ない……私にだって……当然……」
掌に突き出す鉄杭の先端から、剣状結界が伸びる。
地面に突き当たった結界を、更に伸延。
地面を押す伸延の反作用が、基点となるツァイの身体を持ち上げ、冬宇子の元へと運ぶ。
落下するツァイの肩が、冬宇子の展開する緩衝結界に侵入した瞬間、発光と共に不可視の壁が消失した。
冬宇子の緩衝結界は、物理的、霊的な衝撃を弾く効果が持つが、生命の波動には脆弱である。
練精した氣を持つツァイほどの術士であれば、触れただけで、簡単に破壊されてしまう。
>「もう……君を絞め殺すほどの力も……残っていないが……これで十分だ……。
>結界を解いて……一回り小さく再展開する暇が……君にあるかな……?
>あと……二人……まだ……十分……やれる……」
満身創痍の男は、諦める事を忘れたかのように、不屈の意思を以って攻撃を続けていた。
冬宇子達を殺す目的も、報酬も、自身の命すら度外視して、あたかも、『目的に向かう意思』に殉じることだけが、
彼にとっての救いであるかのように。
鬼気迫るその姿は、凄愴で、美しくすらあった。
服を焼き皮膚を焦がす炎を背に纏い、男は、鉄杭の刺さった掌を向ける。
ツァイの読み通り、結界の大きさを変えて瞬時に再構築する技量など、冬宇子にはない。
霊光の切っ先が、冬宇子の喉元へ―――!
今しも、剣状結界が冬宇子の喉を貫くという刹那、唐突にその伸延が止まった。
剣に細かい罅割れが走り、薄氷を叩いたように砕け散って、消滅。
同時に、ツァイが崩れ落ちた。
多量の失血、全身の火傷――気力だけで立ち上がっていた老結界師の身体は、ついに限界に達したのだ。
切り倒された老木のようにゆっくりと傾き、鉄杭を構える体制そのままに、仰向けに倒れ伏す。
冬宇子はツァイの横に跪いた。
一枚ずつしか無い手持ちの五行補助符のうち、水符は、ジンとの戦いで消費してしまっている。
脱いだ外套を男の身体に被せて軽く掌で叩き、未だ燻る着衣の火を消し止めた。
>「ぶじゅらぁあああああ!!」
頭頂の蕾を刈り取られ、気絶していた頼光が、奇声を上げた。
木行の化身たる男の身体から幾条もの蔦が伸び、ツァイの腕の傷に絡み付く。
巻き蔓が紅葉するように赤く染まり、吸血していると知れた。
頼光に巣食う霊樹が、失った養分を補おうとしているのだ。
冬宇子は、腰帯から懐剣を抜き――破邪顕正の力を備えたその霊刀で、ツァイを捕食する蔦を断ち切った。
>「俺は……!ヒトクイには、ならねえ……」
蔦を引き千切り、苦悶する頼光。
―――裡なる霊樹の欲求に抗うとは……あの男、思っていたよりも骨のある男なのかもしれない―――
ツァイの左手を貫く鉄杭を抜き取りながら、冬宇子はそんな事を思った。
焼け爛れた男の手を、そっと握った。
營目の術を応用し、自らの氣を男の身体に送り込む。
深い呼吸を繰り返し、途絶えそうな経絡の氣の流れを整えようと試みた。
ツァイを死なせる訳にはいかない。彼には、まだまだ聞かねばならぬ事がある。
そして何より、冬宇子自身がもう少しだけ、この初老の男と話をしていたかった。
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