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【大正冒険奇譚TRPGその6】
46
:
倉橋冬宇子 ◇FGI50rQnho
:2013/09/02(月) 22:16:36
弱光を放つ結界は全て消え失せ、地面に据え置いた角灯の薄明かりだけを頼りにした視界。
失った腕の疵から血を流している男の顔は蒼白で、
見詰める冬宇子は、何故だろう――自身が彼の身を案じていることに気付いた。
自分達に殺意を向け攻撃する男のことを、冬宇子は、どうにも憎めずにいる。
薬草庫で冬宇子の身体を気遣ってくれた彼の、他意の無い優しさが、心の何処かに染み付いてしまっている。
>「だが、もう迷いはない……君達を殺すよ。
>君達にも、私達と同じように願いがあるだろう。私達と違って未来もある。
>それでもだ。それでも……君達を殺す」
これまで何処か倦怠を帯びていた初老の男の瞳が、凄愴な光を放ち、赫として燃えていた。
負傷した左拳に握られた二本の鉄杭。
不動の覚悟が剣印を不要とし――再び、剣状結界が振るわれる。
ツァイの狙いは、獣人頼光と、結界を弾く霊才を持つブルー。
冬宇子の存在など、歯牙にもかけていない。
人外の膂力を誇る二人さえ始末してしまえば、術才に劣る女一人を片付けることなど、
無敵の結界術を誇る彼にとっては赤子の手を捻るようなものだ、とでも考えているのだろう。
>「そんなもん出してもよぉ!今の俺には止まって見えるんだよ!
>気を込めりゃこんなもん……!」
愚かにも、顕現自在の刃を掴もうとする頼光。
察したツァイが結界を解除。
焦る頼光の身体から、火氣――炎が迸り、
刹那の間、立ち昇った炎は、直ぐに拡散し火の玉となって散っていく。
獣人の頭頂部すれすれに再出現した剣先が、つむじに綻ぶ牡丹の蕾を頭髪ごと削ぎ落とす。
頼光は、短い悲鳴を上げ、頭部の孔という孔から血を噴き出して倒れた。
流石は手練の結界師だ。
すでに頼光の弱点を見抜いている。
頭頂の牡丹は、霊樹を体内に宿す、木行の化身たる者の象徴。
頼光は気を失い痙攣していたが、命に別状は無い筈だ――と、冬宇子は踏んでいた。
花を切られたからといって、植物そのものが枯れてしまうことは無い。『苗床』の本質は体内の深層にあるのだ。
頼光が放った火の玉は、撒き散らされた酒と、蔦の木っ端に引火して、
ちろちろと、地面を舐めるような炎が広がり始めていた。
ブルーが、ツァイの気を引き付けるように動いている。
冬宇子は、腰帯から紙人形を乱暴に引き抜いた。
白紙を握り潰す掌には、炎が作る陰影だけではない、"影の如きもの"が纏わりついているように見える。
ジンとの戦いの折、怒りに我を忘れて、フーの映し身に問いをぶつけた時―――
あの時と似通った状況に際して、冬宇子自身も意識せぬうちに、同じモノが、手の中に顕れていたのかもしれない。
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