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【大正冒険奇譚TRPGその6】
45
:
倉橋冬宇子 ◇FGI50rQnho
:2013/09/02(月) 22:16:09
冬宇子は、身体に風のそよぎを感じた。
散然と吹き付ける呪力の風は、『ある箇所』を境に精緻な操作を得て、上空に纏められ、縒り上げられて、
さながら昇龍の如き、一本の大気の奔流と化していた。
蔦の木っ端を巻き上げる旋風が、うねる龍の動きで、冬宇子を目掛けて降下。
このままでは腕を捕える男ごと、風の刃に身を穿たれて骨肉を散らすことになる。
見開かれた冬宇子の瞳に映る、ツァイの姿が消えた。
次に目に入ったのは、逆さまの詰所建屋、そして闇夜の空―――眩めく視界の中、頼光の声が聞こえる。
>「その腰帯の符だ!フーがよこした奴だ!あれで風を操ってんだ!破っちまえ!」
『ある箇所』とは、冬宇子の腰帯――道士フー・リュウが映し身の媒介にしていた紙人形。
そうだ――この人形が、風の術の中継地点だったのだ。
術式不全の通信障害に見せ掛け、映し身の姿だけを解除したフーが、紙人形の視界を通して
冬宇子を監視していたのだとすれば、ツァイの吐露した言葉にも、合点がいく。
冬宇子達を、この場所に寄越したのは、フー・リュウ!
清国に到着して間も無く出会った宮廷道士フーは、冒険者達に親切に接し、呪災の状況と術理を
詳細に説明してみせながらも、肝心な事を隠している風情で、どうにも、不審な印象が拭えない人物だった。
呪災と原理を同じくする『実験』に携わってはいたが、呪災の発生には無関係だ―――と語る彼の訴えを、
仮初めにも受け入れてしまったのは、清軍元校官ジンの存在があったからだ。
さらに、国家機密である『実験』の内容――不老不死の実現――を、冬宇子が看取したことに、
フーが酷く狼狽していたことも、彼への疑いを削ぐ一つの要因となった。
弱味を握ったつもりでいた油断が仇となったのか。
ジンの妻と娘は、確かに、仮死状態に陥っていた。
あと少し処置が遅れていれば、命を失っていたであろうほど、重篤な状態だった。
妻子への愛情ゆえに、生気狩りという非道に身を堕とした、呪災の被害者ともいえるジンが、
フーと共謀して冬宇子達を欺いているとは考え難い。
冬宇子達を、ジンの元に向かわせたのはフー。
しかし、警備詰所の情報を提供し、地図を描いてくれたのは、ジンだ。
一体、これをどう考えれば良いのだろう――――?
背中に強い衝撃を感じて、ようやく視界が定まった。
気がつくと、冬宇子の身体はブルー・マーリンの腕にすっぽりと収まり、抱き止められていた。
>「見たか毛唐!誰がビビッているかもう一度言ってみやがれ!!」
こちらを向いて息巻く頼光。
その大声に、はっと我に返った冬宇子は、自分の右腕に捕り付いているものを目にして、卒倒しそうになった。
道士服の黒袖を着けた男の前腕が、切り口も生々しく血を滴らせながら、冬宇子の肘を固く握っている。
あの時、生薬の包みを手渡してくれた大きく暖かな手――それが、男の身体から切り離されて此処にある。
左手の刺し傷に加えて、右腕の切断――出血は著しく、止血が間に合わなければ命が危ない。
ブルーから地面に降ろされ、肘に捕り付く切断肢を外した直後、掠れた男の声が耳に届いた。
>「符を……ありがとう……助かったよ……
>礼が出来ないのが……残念でならない……本当に……」
向けた視線の先――半獣人と化した頼光の背後で、
老結界師が、身体に巻き付く蔦の枯葉を毟りながら、ゆっくりと立ち上がっていた。
言葉通り、彼は、冬宇子の渡した治癒符を使っていた。
彼が救ったという瀕死の男の為に、と譲った符を。
しかし、あの治癒符に致命傷を即治させる程の効果が期待できぬことは、精製した冬宇子自身が誰より知っている。
ツァイは、ほとんど気力だけで、身体を持ち堪えさせている。
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