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【大正冒険奇譚TRPGその6】

44倉橋冬宇子 ◇FGI50rQnho:2013/09/02(月) 22:15:42
>>38-39

アレク――こと、ブルー・マーリンの蹴撃による脳震盪で、
意識朦朧のツァイは、冬宇子の營目術による尋問を抗わずに受け入れた。
苦痛に歪んでいた顔が、徐々に強張り、虚ろな表情へ。
焦点の合わぬ眼は虚空の一点を見詰め、唇だけが、訥々と、言葉を紡ぎ始める。
体内の氣の流れ――経絡を操られた被術者と術者の間には、言葉を要せぬ黙契が成立している。
ツァイは、冬宇子が『知りたい』と望む事柄を無言のうちに察知して、彼の知り得る限りの情報を披瀝していくのだ。

>「……何故、私達が……ここへ戻ってこれたのか……。
>そうじゃないんだよ……こうも考えられる筈だ……。
>私達はあの戦場から……遠ざけられたのだと……」

―――何故、私達は『ここ』にいるのか―――
『呪災の只中に、冬宇子達が、この国に居合わせた意味とは?』
それは、自身を巻き込む災厄の正体を暴こうとする冬宇子にとって、必ず知らねばならぬ、第一義の問いであった。
『ここ』とは、現在地――警備詰所のことでもあり、呪災に見舞われた清国そのものをも指している。
ツァイは、前者について語っているのか。
ならば、冬宇子達が意図的に遠ざけられたという、『あの戦場』とは一体――?

ツァイの瞳が微かに揺らいだ。彼の意識は混濁しているように見受けられる。
しばし言葉が途切れ、また語り出す。

>「私は……君達が何者で……何の為にここにいるのかは知らない……。
>だが……それを知る者が誰なのか……それなら……知っているかもしれないな……」

黒免許持ちの冒険者が、呪災の只中にある清国に差遣された理由――それを知る者とは?
詰所の前庭に、今もこの耳障りな風籟を響かせている『風使い』なのだろうか――?

>「彼は私に……君達を始末しろと命じた……。
>国の機密を……国防情報を探っているのだから……殺されても文句は言えない……。
>そうすれば王に……私の働きがが褒賞を与えるに足るものだったと献言してやってもいいと……」

確かに、この国の法に依るならば、冬宇子達は、殺されても文句の言えぬ立場にある。
国家機密窃盗罪――国防上の重要機密たる王都構造図を持ち出すことは、殊に戦時下では重罪に値する。
しかし、冬宇子が図面を所持している事を知るには、
この異国の女が、詰所の中で何を探し、何をしていたのかを、把握していなければならない。
団長室での冬宇子の行動を、監視していた者がいる――というのか?
その人物は、おそらくツァイ自身ではない。
図面を荷物入れに忍ばせたあの時、密室の中にいたのは、頼光とアレクの二人だけ。
外から覗き見ることも不可能だ。扉は閉ざされ、窓には覆いが掛かっていた。

ふっつりと風音が途切れた。話は核心に近づいていく。
冬宇子は、ツァイの顔を見下ろしながら、息を呑んで次の言葉を待った。

>「そう、彼は……」
>「……フー・リュウは、私にそう言ったよ」

発言と同時に―――蔦に巻かれ地面に縫い付けられていたツァイの右手が、ぐい、と持ち上がった。
腕に絡む蔦の葉は、茶色く枯れて風化している。
高位の術者の念は、それだけで術式への抗拒となり、破魔の力を持つ。
冬宇子の術が破られたのだ。
結界師の力強い手が、女の細腕を掴み、肘の関節を容易く捻り上げる。
痛みに呻く冬宇子は、男の腹の上から立ち上がることも出来ない。


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