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【大正冒険奇譚TRPGその6】
38
:
◇u0B9N1GAnE
:2013/09/02(月) 22:11:21
風が降り注ぐ。
風読みの技能はなくとも、その恐ろしい圧力はツァイにも感じられた。
自分は間違いなく死ぬ。この右手に掴んだ彼女と共に。
後の事は――分からない。フーが約束を果たす保証はない。
だがやれるだけの事をやった。
自分は決して逃げる為に、彼女の願いを捨てて死んでいく訳ではない。
自己満足には違いないが――自分は心を苦しめずに死んでいける。
――筈だった。
>「この俺様をぉ!!!武勲を立てて華族になって栄耀栄華を極める予定の頼光様を舐めるなあああ!!!」
叫び声が聞こえた。いや――むしろ咆哮とでも言うべき大音響だった。
次にフーのものではない風を感じ――次の瞬間には、右肘から先がなくなっていた。
「な――」
驚愕の声を上げる間もなく、彼は落ちてきた風の爆撃に吹き飛ばされた。
――けれども、ツァイはまだ生きていた。
倉橋を引き剥がされて、フーは風の軌道を僅かに変えたのだ。
その為ツァイは辛うじて風の直撃を免れ、吹き飛ばされるのみに留まった。
とは言え――
(この出血は……最早止まるまい……)
右腕を失い、出血が激しい。
完全に動けなくなるまで、恐らく一分もない。
(だが……まだ、手はある……)
それは決して正しい手ではない。
卑劣で、穢らわしい手だ。
――それでも構わなかった。
ツァイの出血が収まる。完全にではないが、先ほどまでとは比べ物にならないほど。
あと数分生き長らえ、術を使うだけの猶予が得られた。
傷口の縁に巻きつけた、倉橋冬宇子――君がくれた治療用の符によって。
氣の流れを整えて、出血を抑えていた。
それはつまり――本来この符を得る筈だった男を見殺しにしたという事だ。
「符を……ありがとう……助かったよ……
礼が出来ないのが……残念でならない……本当に……」
左拳に鉄杭を二本――剣印は必要ない。
詰所の敷地を囲う結界も消えた。
「だが、もう迷いはない……君達を殺すよ。
君達にも、私達と同じように願いがあるだろう。私達と違って未来もある。
それでもだ。それでも……君達を殺す」
剣印は敵意、害意に明確な形を与える為の物。
結界の檻は相手を仕留めるべき罪人であると定義する為の物。
どちらも精神を固めるのが目的――それらは最早、必要なかった。
彼の腹の底にはもう炎が灯っている。
煮え切らない男の決意を固め、命が完全に散り果てるまで消える事のない炎が。
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