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【大正冒険奇譚TRPGその6】

27 ◇u0B9N1GAnE:2013/09/02(月) 22:04:52
『――私ね、この国を出て行きたいと思ってるの。窮屈で、退屈な、この国を』

ある時、彼女はツァイにそう言った。

『あ、勿論今すぐじゃないよ?大人になったら、いつかは……ね』

『――それが、君の……?』

『……そう、『本当はこう思ってるんだ』って事。
 誰かにこれを話してしまいたくて、私、アナタに声をかけたの。
 同じものを持ってるアナタになら話せるし、聞いてくれると思った。
 ……ズルいよね』

『……私は、あの時、君が話しかけてくれて良かったと思っている。
 それに今も……話してくれて、嬉しいよ』

その時の彼女の明るんだ表情は、今でも鮮明に思い出せた。

そしてまた数年の歳月が流れ――大人になった彼女と、ツァイは歩いていた。
見せたいものがあるのだと、彼女は言っていた。
連れて行かれた先は、宮中で最も高い場所にある――彼女の部屋だった。

――無論、誰かに見られでもしたら間違いなく一族郎党総死刑は免れない為、
結界術を最大限に活用する羽目になったのも、今となっては貴重な思い出だ。

『……先祖が知ったら、さぞ嘆かれる事だろうな』

『まっさかぁ。王女様のお願いを果たす為に使ったんだから、むしろ名誉な事じゃない?』

『……それで、見せたいものと言うのは?』

『ん……ほら、アレ見て』

彼女が指を差す先には、大きな山があった。隣国との国境だ。

『私、ずっとあの山の向こうに行ってみたいと思ってたの。
 ここからじゃ見えない世界……私の知らない世界に。
 それが私の夢だった。知ってたよね?』

ツァイは無言で頷く。
彼女が次に何を言おうとしているのかを、何となくだが、悟りながら。

『その夢を、叶える事にしたよ。……もう、準備は出来てるの。今夜、この国を発つつもり』

『……寂しくなるよ』

真っ先に感じたのは、それだった。
この国の外で無事に生きていけるだろうかと、不安も感じた。
だが、それを理由に引き止めようとは思わなかった。


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