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【大正冒険奇譚TRPGその6】
21
:
倉橋冬宇子 ◇FGI50rQnho
:2013/09/02(月) 22:00:39
>「チィイイイイッ!!やってやらぁ!!」
先刻から、ブルーの身体から微かに立ち昇っていた、不安定な『氣』―――
道術魔術などの術式の斎整を経ぬ、原始的な『生命のエネルギー』の如きそれを、彼は足元に集約し、靴のように纏う。
爪先を天に向けて跳躍―――!
氣を帯びた足が、霊光を弾き、伸延する剣の軌道を逸らした。
そして、着地は、剣状を成す結界の上へ。
支えるツァイは重みに耐えかねて、剣先が、片側だけに錘を載せたシーソー遊具のように傾いて地面を穿った。
>「あちっ!あちあちあちちゃ〜!!」
ブルーは、綱渡りさながらの不安定さで結界の刃を走り、術士の眼前へ。
膝頭を高く引き上げて足裏を突き出し――前蹴りがツァイの額を捉えた。
足場が悪かったせいか致命傷には及ばなかったが、ツァイは全ての結界を失い、大の字に地面に打ち伏していた。
また、風が吹き始めた。
詰所の前庭を冷風が渡る。呪力を帯びた道術の風が―――。
道術で風を起こすのは、中々に高度な技量を要する。
陽から陰に――流動する氣の道に、風は生じる。
陽の氣と陰の氣を、狙いの位置に瞬時に練り上げなければ、風を操作することは出来ない。
それも、頑丈な蔦を刻むほど強力な烈風を、複雑かつ繊細に、変幻自在に操る腕前。
卓越した技量を持つ、高位の道術使いでなければ不可能だ。
冬宇子が、かつて出会った道術使いの中で、その水準に達する者が二人いた。
王付きの呪医にして宮廷道士のフー・リュウ。そして、日本の寒村、日ノ神村で相見えた女道士、伊佐谷―――。
もっとも、道術発祥の国においては、その程度の力量を持つ道士は、珍しくないのかも知れぬが。
居場所は判らぬが、謎の道術使いが、この戦いを監視している。
何処かに隠伏し、ツァイを手助けしている。
まるで、彼に課せられた役割を果たせるか、裏切りはせぬかを、見届けるかのように。
その者こそ、求める問いの解を――冬宇子達がここに居る理由を、知る相手なのかも知れないのだ。
ともかく、ツァイ一人を相手に戦っていては、埒が明かないのは確かだった。
冬宇子は木行の呪言を唱えた。
ツァイを拘束した蔦は、烈風に切り裂かれはしたが、未だ呪力を失ってはいない。
蔦は再び生長し、初老の男の年の割りに剛健な身体を、地面に縫い付けた。
そうして冬宇子は、着地に失敗し背中をさすっているブルーへと目を向ける。
唇に微笑。けれど、視線に棘を潜め、
「いつも、いい仕事をおしだねえ……本当に頼りになる男だよ。
でも、あんたは子供……怖いもの知らずで、苦労知らずの、願えば何でも叶うと思っている、甘やかされた坊ちゃんだ。
ついさっきまでの、あの男と同じでね。」
ちら、と、頼光を視線を送り、にわかに表情を怒りに変じた。
「何を迷っている――怖いのか――だって?フザけるんじゃないよ!このガキが!!
ジンの言っていた通りだ……あんたは子供だ。自分を省みることも出来ず、何を怖れるべきかも知らぬ愚か者さ!
あの男をけしかけて……もしも、あの男の身に、取り返しのつかぬ事が起こったら、どうするのさ?!
責任取れんのかい?!
なァにが船長だよ!あんたは、人の上に立つ器じゃないね!
あんたの下らない根性論に振り回されて、命の危険に晒される船員どもが気の毒でならないよ!!」
朱を差した唇を歪め、憎々しげに言い捨てた。
万が一、頼光の身に『取り返しのつかぬ事』があったとしても、冬宇子にとって意味するところは『戦力の喪失』だけだ。
孤立無援の異国の地においては貴重な戦力であるが、もとより同じ力量の同業者であれば、誰でも置換可能な存在だ。
なのに何故、彼の危機を前にして、冷静さを失うほどに取り乱してしまうのか。
自分自身、整理のつかぬ感情が、一層冬宇子を苛立たせた。
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