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大正冒険奇譚 臨時避難所
315
:
鳥居呪音
◆h3gKOJ1Y72
:2014/10/23(木) 00:56:53
「素敵でしたよ波留さん」
彼女は混じりっけなしの純粋だ。と、鳥居は思う。
これからの冒険で彼女のたぎった血はいったいどんな味を醸し出すのだろう。
微笑する鳥居の白い顔はまるで仮面のようにその危うい本性を隠している。
そして鳥居は富道の前に出た。
「はじめまして、僕の名前は鳥居呪音と言います。
本日はこのような晴れやかな場所にお招きいただき、誠にありがとうございます」
そう言って鳥居は深々とお辞儀。
「えっと、なんて言ったらよいのか。
他の冒険者の方々と比べてしまったらお恥ずかしいのですが
僕は趣味的に楽しく冒険をさせていただいております。
これもみな、富道さまのおかげです。
ほんとうにありがとうございます」
こほんと一つ咳払いをし
「そんな僕の話はとある男の昔話を聞いて欲しいという嘆願でした。
依頼人は自称落語家で名前を柳家永六と言いました。
彼の御屋敷はなかなか立派なもので、咄家さんも結構お金になるものだと内心驚いたものです」
その日は小雨が降っていました。柳家邸に呼ばれたのは僕一人。
永六は実年齢よりも年老いて見え、骸骨のような顔から目玉がこぼれ落ちそうなほど窶れてはいましたが
微笑しながら座布団の上に正座をしていました。
彼は数多くの冒険者のなかから子供のような僕を聞き手に選んだそうです。
……永六は昔話をしました。青春時代の恋ばなしから始まって
何故か十年以上昔の誘拐事件の話にまで至りました。
なので僕は知ったかぶってしまって
「あの事件って、身代金が紙切れにすり替えられていて、お子さんが殺されてしまった事件ですよね?」
僕は彼にそう質問してしまいました。
(犯人は現れずお金だけがすり替えられていて、そのあと人質の子供は殺されしまったという怪事件でした)
それと同時にピンときて、顔色を変えてしまって……。
その様子に察した永六は寂しく笑いながら
「あの事件の犯人は父親の門井伝助でんがな。
あの状況で身代金をすり替えられるのはあの男しかおらん。
ん?実の父親が子供を殺すような真似をしますのかって?
……まあそこが一番の盲点ゆうか味噌なんやわ。子供のあんたには言いにくいことなんどすが、、
所謂、種違いやったんですわな。
せやから門井は子供を餌に実の父親を探して殺そうとしていたわけですねん。
身代金はそのついで。婿養子の伝助の懐には自由になる金が転がり込むっちゅうことですわ」
「ですがそのあと、子供を失った奥様は気が狂って自害してしまって、門井屋も経営難で破綻してしまったのですよね」
僕がそういうと柳家永六はとても悲しい顔をしていました。
そして悲痛な目で僕を見つめて何かを呟こうとしたその時、
雨が本降りになって、激しい雨音で彼の声はかきけされてしまうのでした。
「なので、僕は彼の最期の言葉を聞けず仕舞いなのです。
残念なことに永六さんは、正座をしたままおなくなりになられていました」
語り終えた鳥居は一先ず安堵する。
何の話かはよくわからないような気もするが、
富道が喜んでくれるものかと静かに胸を高鳴らせていた。
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