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大正冒険奇譚 臨時避難所

313鳥居呪音 ◆h3gKOJ1Y72:2014/10/23(木) 00:53:57
倉橋冬宇子とデェトした次の日は何気に忙しかった。
用心棒のヤクザもんにお酒を持っていったり
団員の一人の卒業パーティーを開いたり、頼光の祖父に会いに行ったりと…。
彼の話では頼光は密偵として働いているらしい。
(鳥居にはそう説明された)
なのでそれを聞いた鳥居は少しだけ安心する。

「ああ、頼光とはまだつながってる……」
夜空の月をまなこに映して鳥居は呟いた。
彼とはまたどこかで会えるような気がする。
それが数年後、何十年後になるかはわからなかったが……。

そして清での冒険から一週間ほど経ったある日、受願所から使者が来た。
あの受付嬢だった。

「え〜!」
胸に手のひらを当ててのけぞる鳥居。
今回はなんだろう?
期待か、不安か、鼓動がはやくなる。
だが今度の嘆願は富道という華族の懇親会に参加して冒険譚を提供するということだった。

三日後、送迎車が来る。
だが流石に一人に一台というわけでもなく
三人で相乗りだ。
同乗者は倉橋冬宇子。それに波留京花。
初見の彼女は将来有望な冒険家なのだそうだ。
鳥居は波留に自己紹介をすると普通に大人しくしていた。
倉橋のいるこの場では普通でいようとしていたのだ。
それは照れ隠しのようなもの。
たぶん、倉橋冬宇子の指すデェトという言葉は「ごっこ」に近いもの。
鳥居もカフェーの客の一人のように御褒美デェトをしたのだと思う。
だから恋人気取りで調子に乗って膝枕でもしようものならオデコに握り拳固を一発おみまいされてしまうかも知れない。

(……でもあのデェトって変な感じでした。
現実感がなくって夢みたいな感じ。
ほんとにデェトしたのかなって思います。
そんなことを思うのもニセモノのデェトだったからでしょうかねぇ)

自分でもよくわからない。
それはそれで人形芝居のように優麗で、その一時だけ時を共有しあえた尊い経験だったのかも知れないし
形だけの意味のないこと。と、思ってしまえば思いに反比例するかのように虚しくも思える。
例えれば綺麗な着物の裏と表を着間違えてしまったようなこと。
とらえかた次第では何とも残念なことに変貌してしまうのだ。

(うん。でも贅沢はダメです。あの約束は前渡しとして少しだけ果たされたのです。それはそれとして尊いことと考えましょう)
勝手に自問自答しながら鳥居は二人の会話に耳を傾けていた。


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