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大正冒険奇譚 臨時避難所
286
:
鳥居呪音
◆h3gKOJ1Y72
:2014/09/25(木) 18:56:11
宵宮。この日はサーカスも休み。
今宵だけは何もかも忘れたい。
それは忘れてはいけないこともあるのだけど。
鳥居は雑踏に紛れて御神輿を見ていた。
提灯の灯りと電灯の灯りのコントラスト。
神社の背景に屹立するビルヂング。
共存している和と洋が帝都の夜を装飾している。
見世物小屋では蛇を食べている女。
人だかりにはエレキテル人形。
何故かその瞳には憂いがあって何処かしら悲しげ。
それは不完全な人の認識をこえ
無意識の完全さをもつ人形の憐れみか。
神の視線か。
そのガラス細工の瞳に吸い込まれそうになった鳥居は
何故かそのエレキテル人形と死王の姿が重なってみえ背筋がぞくりとした。
それはまるで虚空に独り浮かぶような恐怖、神に対する恐怖にも似ていた。
所謂畏怖なのかもしれない。
「……君って、僕の心の中にも残っててくれてたんだ」
鳥居は高い所から突き放すような笑顔で
無表情の人形を見上げる。
すると
からん。ころん。からん。ころん。
暗がりから聞こえてくる下駄の音。
ひょっとして倉橋か、もしくはあかねか。
そう期待した鳥居は顔面を普通に戻し振り返った。
そうだ。何を隠そう鳥居は、あかねの血の味が忘れられないでいたのだ。
それは若い魔性の血の味だ。
あれを吸えば鳥居は無敵。力で敵うものなどこの世にいるものか。
そんな錯覚にさえ陥ってしまう。
だが下駄の音の主は知らない子連れの中年女。
「……愉快でおじゃるのぉ。おほほほ」
鳥居は、変なしゃべり方と思いながらショボくれた老猫のように親子連れを見送った。
世の中、そんなに都合よく出来ていないものだ。
会いたくもない人間とは鉢合わせしたり、
不倫デイトしている知り合いの真後ろを偶然歩いていたりすることもあるのにだ。
「まあ、冒険者の誰かとこの場所でバッタリ出会えたら、それはそれはとてつもなく幸運な出来事ってことで……」
鳥居は、てへっと笑って自分のオデコを手のひらで叩いた。
その後はしばらく親子連れの後ろ姿を見つめながらあの女たちの血の味を想像する。
そして結論としては年増女や未成年の血は吸いたくないことに気がついたのだ。
それよりも見ず知らずの者の血を吸うことには抵抗があった。
やはり吸うのなら若いあかねのような気心の知れている者だ。
勿論、倉橋やマリーの美貌も捨てがたい。
彼女たちの血はいったいどんな味がするのだろう。
そんなほの暗い気持ちを宿したまま、鳥居は帝都の闇に消えるのだった。
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