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大正冒険奇譚 臨時避難所

258 ◆u0B9N1GAnE:2014/08/15(金) 03:39:33
「よっし、いい感じ。じゃ、今の内に……ねえ、そこのお姉さん!あなたも術士だよね?土行か金行って得意?
 もし得意だったらさ、そこら辺に矢倉を立ててよ。
 アイツら動きは鈍そうだし、高いとこに上っちゃえば当分は安全だと思うんだよね」

視界に映った冬宇子に、リウが声をかける。

「あ、お仲間さんがいるんだっけ?だったらそっちもなんとかしないとね」

それから右足を空中に、まるでそこに見えない階段でもあるかのように、踏み出した。
続けて左足を同じように動かす――彼女の右足は、宙に浮いたままだった。
そのままリウは空中を一足ずつ登っていく。
釘の『留める』性質を応用して、自分の足を空中に適時固定、解除を繰り返しているのだ。

「んーと……一、二、三……五人でいいのかな?」

高所から戦場を見渡し、それらしき人影や戦闘の余波を見て取ると、リウは右手を頭上に掲げた。
呪力が滾り、生み出されるのは、やはり無数の釘。
不死の法そのものと化し、存在の時間を固定された彼女の呪力は、底なしだった。

金色の閃きが豪雨のごとく戦場に降り注いだ。
数え切れない程の動死体が、見る間に身動きを縫い止められていく。
戦場の一部が、まるで切り取られたかのように静止した。

「……これは、誰の術なんだ?」

異変を察知して咄嗟に盾にした動死体の陰から、双篠マリーが呟いた。

「誰でもいいぜ。今一息つけるなら、あのガキが地の底から追ってきたんだとしても歓迎してやらあ」

地面に倒れ込んだ生還屋が、息も絶え絶えな様子でそう返す。
数秒かけて呼吸を整えると、二人は周囲を見回し――空中に立っているリウの姿を発見する。

「ありゃ確か、あの腐れ道士の……なんてえおっかねえ女だよ」

「……とにかく、助かったんだ。まずは皆と合流しよう」

この時点で――冒険者達の生存はほぼ確約されたようなものだった。
倉橋冬宇子はまだ何枚か補助符を残している筈だし、リウだって釘以外の金行がまるで使えない訳ではない。
即席の矢倉や砦を築き、その上に退避すれば、釘による隔壁を乗り越えたとしても動死体共は冒険者達に触れられない。
矢倉の強度も、補完する術はいくらでもある。

当面の安全さえ確保出来れば、清王の事だ。
事がどう転んでもいいよう、後詰め兼、確認用の部隊を送るくらいはしてくれるだろう。それはまず間違いない。
なにせ――遺跡付近の交戦状況を知る事の出来た彼が、この事態を想定していなかったのは少々不自然だからだ。


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