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大正冒険奇譚 臨時避難所

170鳥居 呪音 ◆h3gKOJ1Y72:2014/03/24(月) 19:51:57
>「正直言って……俺には、君の苦悩は理解出来ない」
背後からフー・リュウの声が聞こえる。

>「だけど今、君に凍ってもらっちゃ困るんだ。あぁ、ホント悪いと思ってるよ。優しい言葉の一つも掛けてやれなくて。
だが忘れるなよ。君が負けちまったら、ここにいる皆が死ぬ。少なくとも、地上にはもう帰れないんだ」
>「自分のせいで誰かが死ぬなんて、置いてけぼりよりもずっと嫌だろ。
なぁ、頼むよ。頑張ってくれ。俺はどうしても……彼女を助けなきゃならないんだ」

フーの現実的な言葉の最後に噴出した感情。
彼女と聞いて、巻物に描かれていた女が頭に浮かんだ。

「……や、優しい言葉なんていりません。見たいのはあなたたちの笑顔なんです」
鳥居の弱々しい声。だが意識は戻ってきたようだ。
そしてそれに反比例するかのように力強い死王の声が響き、影による術式が展開する。
その影は死王の弱点と言えるべきものなのかも知れないが
鳥居にはどうすることもできなかった。
続いて畳み掛けるように死王の攻撃準備が繰り出される。

>「……ねえ。もし、これを全部一斉に融かしたら、この部屋の空気はどうなっちゃうと思う?」

(……ごめんよ。やっぱり君は、ぼくの求める本当にはなれないんだ。
君は頼光みたいに火の輪くぐりでドジもできないし、死んでしまった母さんだって同じさ。
癒してくれるどころか今でもぼくを悲しみで苦しめ続けている。
でもそれは全部ぼくの心に刻まれたことで忘れたくないことだったんだよ)
死王にどんなに強く抱かれても、鳥居の心のなかで彼は悲しく救われない少年のまま……。
倉橋の言う通りに自分だけを愛して生きれたら人は自由になれるのだろうか。
鳥居がサーカスのショーを行うのは、自分と観客が
一瞬でも孤独を忘れることができたら良いと思う希望だ。
かたや死んだ母親との絆、喪失感は決して癒されない孤独を生み出している。
だがその正と負の入り交じった感情は生きてきた証であり孤独や悲しみは自分の影。
それを捨ててしまったら自分はゼンマイ人形と同じだ、と鳥居は気づいた。

「倉橋さん。ここから脱出できたら一緒に三社祭を見に行きませんか?
お神輿は三つとも大震災の大火災でも無事だったそうですよ。
それってなんだか嬉しくなりません?」
その後、戦災で焼失したらしいが、鳥居はこんな場所で明日以降のことを話していた。
それはまるっきり意味のないこと。
でもそんなことはどうでもよかった。
天の邪鬼の倉橋冬宇子がぷっくりむくれようと怖がることもなにもないのだ。


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